雑誌VOICE 9月号の藤巻さん

膨大な著作の国際エコノミスト 長谷川慶太郎 vs. 伝説のディーラー藤巻健史 という異色の対談で、その上タイトルが ... 「デフレ好況」は空を飛ぶ」 ... と、意味不明。

JPモルガン時代アナリストやエコノミストの言うことに全然耳を貸さなかったといわれる藤巻さんと著作の数で日本の経済評論家の代表格の長谷川慶太郎さんとの間ではたして対談が成立するだろうか、と大いに興味をそそられました。

ちょっと不適切な例えかもしれませんが、日本の評論家の典型的な見解を長谷川慶太郎さんとすると、その見解に対し藤巻さんが具体的な数字をあげて日本経済の現状と理由を説明するという素人にもわかりやすい対談でした。

長谷川さん : 日本のモノ作りは強い(非価格競争力がある)、だから円高は輸出を止める原因にならない。中国で生産するのは安く作れるから。

私が思うに、中国で安く作れるから製造業の国内での雇用が減り、景気にマイナスに作用する。これに打ち勝つためには、
(1)中国で生産できないモノを国内で生産するか、
(2)非製造業を強化してそちらの雇用を増やすか、
のどちらかと思います。しかしふつう製造業は誰でも製造できるように製造方法や設計を工夫するものなので、いずれは機械が製造するか人件費の安いところで製造することになります。結果、人件費の高いところで製造業の製造工程での雇用は維持しづらい!となります。設計の仕事ですらインターネットで中国やインドの若者と競争する(それを活用するのは欧米の会社)ので市場経由で裁定が働き雇用に圧力がかかります。日経エレクトロニクス7月31日号のHon Hai特集を読むとモノ作りの優位性がジワジワと侵食されつつあることがわかります。

秋に発売と言われるPlayStation3は最初から全面的に中国で生産だそうです。円が高くても製造業の会社は生き残れるかも知れないが、円が高いと製造業が抱えていた雇用は失われる。

インフレ・デフレの原因についてのお二人の見解の差異はいろんな意味で興味深い。

長谷川さん : 戦争はインフレ、平和はデフレ。

私の理解では、戦争をすると戦費調達のためにしばしば国が国債を発行し中央銀行がマネタイズすることでマネーサプライ増となりインフレ、財政規律が保たれる状況での戦争は消費減・投資減・更に資産価格低下の逆資産効果で景気にマイナス要因、金本位制の時代は平和な時期に経済が活性化しようとしても経済成長に見合うほど通貨(金)を供給(掘り出す)ことができないためマネー不足でデフレ圧力がかかり、ペーパーマネーの今日では中央銀行の政策次第、です。

藤巻さんのロジックは経済学の初歩の知識を応用できるようになるとロジカルに筋が通っているのでスッキリとわかりやすい。(やっとこのレベルに達しました)。一方、長谷川さんの見解は奥が深すぎて私には理解困難(応用できない)と感じました。