エルピーダ & 台湾PSC #2

私は製造業に従事している関係で製造業の設備投資には大いに興味があります。
DRAMに命をささげている(?)坂本社長率いるエルピーダと台湾PCS(Powerchip Semiconductor)がどういう目論見でジョイントで総額1.6兆円の設備投資をするのか、暇なときに考えていきたいと思います。

エルピーダのWebサイトおよび新聞報道によれば

  • 台湾 台中のPCSの敷地に工場を建設する
  • 台中のPSCの建設中の工場Fab 1がこの投資の最初の工場になる
  • 今後4〜5年で、両社で、合計1.6兆円投資する
  • Fab1は現在クリーンルームを建設中
  • 07年度Q1にFab1に設備を導入し、07年度Q2に70nmで300mm Wafer max 30K枚/月の生産を目指す
  • Fab1はmax 60K枚/月まで生産できる建物である
  • Fab1と同規模の工場を合計4つ作る http://www.elpida.com/pdfs/pr/ECR-FM-0055.pdf
  • 10年〜11年には4工場で240K枚/月の生産能力となる
  • 09年のJoint会社を台湾か香港で上場する、上場の目的はJoint会社が単独で資金調達できるようにするため
  • 上場後、両親会社が25%づつ株式を持つ
  • 上場語の設備投資は両親会社が3割、Joint会社が7割が理想
  • パソコン向けの汎用DRAMを生産する
  • エルピーダDRAMの生産能力は Joint会社の240K枚/月の50%の120K枚/月 + 広島工場 = 約200K枚/月 となる

工場1つあたり4千億円!で、規模の効果を追求した大型低コスト量産工場を、毎年1棟建て、1棟毎に05世代進化させた最先端微細プロセスを投入するという構想ではないでしょうか。

ライバルのサムスンの工場は旧世代(200mm Wafer)の製造装置が多く近い将来の微細化プロセスではそれらが使えなくなり最先端プロセスでの生産能力は低下する、と坂本社長はおっしゃる。

坂本社長は

  • サムスンの莫大な製造装置が最先端プロセスにマッチしなくなり
  • 世界経済が強く(波はあるものの)当面のDRAM需要が強いことが期待でき
  • Korian Wonが超割安レートから正常レートに回帰しサムスンの為替レートメリットが消えつつあり
  • 日銀が流動性を供給している間に

大勝負をかけるつもり、とみました。

DRAMは需給によって価格が大幅に変動する商品なので需給に影響を与えるグローバル景気を正しく読む必要があり、巨額な投資のための金利ファイナンスの見通しが必要で、さらに微細化とか製造コストといった技術的な競争が続く。そのうえ強力なライバルがいる。タフなビジネスですね。

坂本社長はかつてエルピーダが資金不足だったころ、サムスンがあまり強くなっては都合の悪いIntel*1からエルピーダの資金を得ています。タフなビジネスマンですね。

*1:IntelにとってIntel以外のPCバリューチェーン上の会社が互いに競争し部品価格が下がることで、CPUを値下げしなくてもPC価格が下落し、CPUの数量が増えるのが一番望ましい