日米の家計部門が保有する金融商品 保険と年金

これから10年 長期投資のロードマップを読み返していました。この本の196ページに2005年6月の日米の家計が保有する金融商品の分布があります。

金融商品   日本 米国
現預金 55% 13%
8% 35%
債券 3% 6%
投資信託 3% 13%
保険 16% 3%
年金 11% 27%
その他 4% 3%

日本の家計の株式保有が少なく米国の家計が多いことは良く知られたことですが、今回興味を引いたのは日本と米国の保険と年金の保有の傾向が正反対だということです。
保険は想定以上に早く死ぬリスク(想定していた将来の収入を失うこと)を保障する金融商品
年金は想定以上に長生きするリスク(想定以上に将来の支出が発生すること)を保障する金融商品
これを見ると、
米国の家計は年金を厚くし長生きのリスクに備え、
日本では預貯金を積み上げ自前で備えている
といえるかもしれません。
年金は早死にした人が長生きした人にお金を譲る仕組みで、世代全体でみればより少額な積み立てで死ぬまでの支出をまかなえるため、現役のうちはより多くを消費に振り向けることができるといえましょう。
各個人の預貯金による積み立ては自分がいつ死ぬかわからないゆえどうしても多めに積み立てることになりましょう。結果として使い残した分は遺産として次世代に移転し次世代の積み立てを少なめ(消費は多め)にできます。長期的には時間軸上で世代間で遺産と通じて貯蓄と消費は平準化するするかもしれませんが、世代間の人口に分布があると、時間軸上で過剰貯蓄・過少貯蓄が発生し経済の特性を変化させるといえましょう。
それにしても日本ではどうしてこんなに保険が多いのでしょう?。早死にのリスクヘッジというよりも保険もついた貯蓄性金融商品として利用されているのではないでしょうか。そう考えると、純粋な保険としての成分はもっと少なく長期債的金融商品として保有されている。
保険+現預金のかなりの部分が間接的に政府の負債(国民から見ると国債等の金融資産)にまわり、それが老後の為の積み立ての余剰(遺産)として次世代に渡されると、次世代は自分の金融資産を受け取るためにも税金を払う、といえましょう。政府が負債で調達した資金が経済の成長させる用途に使われていればGDPが成長することで負債の比率が軽くなるなるでしょうが、政府がそれほど賢明とは言い切れないので....。
このように考えると、年金を使うことで必要以上の貯蓄を減らしそれを消費にまわし(活発な経済を享受する)米国の家計部門は合理的、と思えます。
日本の場合は、家計が将来を合理的に予測できるシンプルで見通しの良い公的年金制度と効率のよい私的年金制度を持っていれば、長い大不況に苦しみ莫大な財政赤字を抱えずにすんだといえるかもしれません。年金は厚生省の管轄ですが厚生省はマクロ経済との関連は関心の対象外だったのかも知れません。

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