黄金の相場学(文庫版) by 若林栄四

若林氏の得意とする「相場学」や「チャート」の部分は私にはよくわからないのでとばして、氏がマクロをとう見ているか、とういメモ。


黄金の相場学 (講談社+α文庫)

黄金の相場学 (講談社+α文庫)


長期金利の見通しを誤った、短期金利の上昇に比べ長期金利上昇が小さい(2年で1%) → 円相場へのインパクトが予想より弱かった
日本のインフレ政策への傾斜がクローズアップされると思ったが政府はパフォーマンスで隠している --- いずれ脚光を浴びる、インパクトの大きな円安になる
相場のリズムで'10年は円高ドル安


適正な水準(?)の考え方
'95年 日本のGDP=500兆円、USのGDP=7兆ドル×80円=560兆円、11セットの機動艦隊を遊弋させる米国と日本が同程度とは為替の悪い冗談
'06年 USのGDP=12.5兆ドル×120円=1500兆円


過去10年間
日本 デフレ 1%
米国 インフレ 2%
インフレ格差 3% ×10年 = 30%、円はドルに対し30%高くなった。
市場は毎年3%の円高を期待 → 経済にデフレ圧力 → 円高圧力 この結果デフレスパイラル
為替の経済に対する影響: 一方向に偏よりそこに定着しがちな作用
公共事業当はデフレ不況を一時的に止める効果はあってもトレンドを反転させるほどの力は無い --- ジリ安、ジリ安は厄介
ジリ安 → いったん暴落させる → 相場は上昇に転ずる
小泉内閣の役目は暴落内閣
外国人投資家の日本株買い → 円買い → 円高圧力(景気に悪影響する)
対策として、50兆円のドル買い円売り介入 ('02年〜'04年) --- インフレ格差3%、毎年3%の円高という市場期待を断ち切らないと長期にわたりデフレスパイラルが進行する。


10年で30%のインフレ格差がなかったならば、今の120円/ドルは120円/0.7=177円となっていたはず
若林さん: いくら何でも円安すぎる だから今の120円は本来よりも円安すぎる → だから市場はいったん円高にふれる
藤巻さん: べき論で言えば200円


経常収支 ... 貯蓄率 国内に投資機会が乏しい場合、資本輸出する
日本の貯蓄率 低下中
家計部門 ... 高齢化、不景気で貯蓄できない
企業部門 ... 借り入れを返す → 銀行が市場性のある国債を購入、企業が景気向上で設備投資をすればマイナス貯蓄の拡大
企業部門からカネを借りられないならば政府はどこからカネを借りるか?
海外から借金する(海外の貯蓄に依存する) --- 経常赤字国になる
国債を買ってもらうためには

  1. 利率を大幅に引き上げる --- 金利が上昇すると借金が増える(財政破綻への道)から金利は上げられない
  2. 通貨を円安にする --- 外貨ベースでより少ない資金で日本国債を買える

貯蓄不足 = 経常赤字、長期金利上昇


日銀の長期国債保有は日銀券発行残高(人々の行動で決まる、銀行に現金を預金すると日銀に戻ってくる)の範囲内ということは、日銀は長期金利の面で日銀券が市中に出たままになるような政策(超超金融緩和)をとるということか。しかし、それを続けるとバブルが成長するからいつまでも続けられないハズ。ということは、ある時点で長期金利は上昇する...。藤巻さんによれば景気回復で経済は長期金利上昇に耐えられるが、問題は政府の利払い。


アメリカの財政・金融政策 : ITバブル崩壊後、個人消費と住宅投資を刺激する
その結果、貯蓄率ゼロ → 経常収支赤字の拡大
アメリカの経常収支赤字は借りて・貸し手のどちらが牽引したか?

  • 借り手ならば、実質金利は上がるハズ ... 中期金利が低いのは低インフレ率を差し引いても実質金利が低いからであろう
  • 貸し手ならば、自室金利は下がるハズ

東アジアの国々で 貯蓄 > 投資 ならば、東アジアに不況が生まれがちといえる。


ケインズ大恐慌(デフレスパイラル)、90年代の日本の失敗 より、アメリカは財政・金融刺激策を発動 → 世界不況の回避、双子の赤字はそのコスト


アメリカ経済は製造業の比率が小さい → ドル安の貿易収支の改善は限定的
ドル安は資本輸入を困難にする --- その結果は金利上昇
ドル高で資本を輸入し成長する --- ルービンの政策
'87年ブラックマンデー --- ドル安による企業収益改善による株高がドル安による金利高でひっくり返る


過剰消費から貯蓄増強へトレンド移動する (不動産バブルがはじければ貯蓄モードになる) そうなると

  • 経常収支赤字は縮小、ファンダメンタルズは良くなる
  • 世界経済は景気が悪くなる (特に東アジア)
  • ドルは強くなる


アメリカの第二次大戦後の財政赤字処理
35年間で4倍のインフレ、赤字 GDPの160% → 30%台
日本は同時のアメリカよりも潜在成長率が低いからもっとインフレを使うのではないか?

インフレ政策 → 長期金利上昇
政府債務残高がGDPの70%ぐらいになると長期金利は大きく低下する。


米国経済:ITバブル → 住宅バブル → それがはじけて'10年より貯蓄率上昇をともない新しい成長路線に入る


本当のドル暴落シナリオ

  • アメリカの経常収支が黒字になり自己ファイナンスできる時。ドルを国外から集める必要が無い。そうなると強いドルは不要。
  • 帝国が軍事力で揺らぐとき。中国の軍事力がアメリカに並ぶのは'30年ごろ。
  • アメリカの社会保障年金の行き詰まり。'30年ごろ。