北野一さん 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』 JMMメールマガジン 第436回目

村上龍さんの質問
「日本経済界というか、日本社会における経営者&役員の報酬ですが、どの程度が適正なのでしょうか」、
に対し、JPモルガン証券日本株ストラテジストの北野一さんは

1999年度 2005年度
役員賞与 1417億円 6127億円 412.6%増
役員給与 7523億円 9327億円 21.3%増
従業員給与 41兆6690億円 39兆6475億円 5.0%減
福利厚生費 10兆3221億円 8兆8411億円 10.5%減

とデータを示し、日本企業、特に大企業(資本金10億円以上)において、役員・従業員間の収益分配構造が劇的に変わったことを指摘。
そして、

 私は、グローバリゼーションが、こうした変化の背景にあると思います。1990年代以降、日本企業の株主構成が大きく変化しました。1995年まで10%以下であった外国人投資家の日本株保有比率は、2006年度には28%にまで増加しております。外国人投資家は、日本が少子高齢化社会を迎えているとか、デフレに呻吟しているといった日本の特殊事情を斟酌することなく、他の国と同じリターンを日本企業に要求してきます。世界中で同じリターンが要求されるということは、実質的に、世界中の資本コストが一本化されることを意味します。これが、グローバリゼーションの本質であると思います。日本のように人口減少を受け潜在成長率の劣る国が、世界平均的な資本コストを要求されるということは、慢性的に金融引締め状態に置かれることを意味します。
 日本企業の役員(経営者)は、慢性的金融引締めによりパイ(付加価値)が大して増えないなかにあって、「株主」の要求に応えるべく(高い金利を払うべく)、従業員などの他のステークホルダーへの分配を削ってきました。こうした傾向を後押ししたのは、いわゆる「構造改革」です。
(中略)
 以上を纏めると、こういうことになります。(1)グローバリゼーションの結果、日本の企業経営者は、世界標準のリターンを要求されている。(2)企業経営者を業績拡大へと動機づけるために、政府は税制優遇等の「改革」を行った。(3)しかし、慢性的金融引締めのせいで付加価値の伸びは鈍い。(4)付加価値が伸び悩むにも拘わらず利益を出さねばならないので従業員等への分配を削った。(5)役員賞与は相対的に大きな利益に連動するために、役員と従業員との間の分配面での格差は、戦後の日本では見られなかったほど急拡大した。

と、分析しています。

どおりで私の収入は...という話はさておき

日本のように人口減少を受け潜在成長率の劣る国が、世界平均的な資本コストを要求されるということは、慢性的に金融引締め状態に置かれることを意味します」、この視点になるほど!と思いました。