「地価上昇は30年続く」 by 増田悦佐, 雑誌 Voice 2007年11月号

私の場合、どの銘柄が上がる・下がるには注目しません。私が目にする頃には既に織り込まれているでしょうから。 どう考えるか、なぜそう考えるか、これに注目します。以下は要約のメモです。青文字部分は私のたわごと。


地価上昇は選別的、日本全体から見ればごく限られた場所。津々浦々地価上昇することは無い。
先進国において人口は安定した変数であって、一国の国民経済全体について人口が増えたから地価が上がるとか人口が減少したから下がるということは無い。人口が地価に影響を与えるのは、社会増・社会減という、ある地域から別の地域への人口移動である。社会増・社会減は政治・経済・社会情勢次第で大きく変化し、地価に影響するほどの変化となりうる。
確かに日本の人口は減少に向かうとしても1年に何%も減るわけじゃない。一方、社会増・社会減はけっこう大きいといえましょう。社会増・社会減に注目です。


アメリカは移民による社会増が経済に組み込まれており、移民の人数が政治的思惑で増減し経済に影響を与える。
移民がほぼゼロの日本では、どこかで地価を押し上げるほど人口が増えているならば、どこかで地価を下げるほど人口が減っているハズ。軒並み地価が上がっているならば実需を上回る仮需が生じている証拠であり、相場は崩れる。逆の場合は、相場は回復する。
全体の地価が下落するなかで人が集まる地域のみ上昇する状態は、きわめて健全で、持続的な地価上昇の基盤をなす。
更に藤巻さんの場合は時価総額が増加するならば円の価値の減少が始まっていると見るのでしょうか。


2002年から始まる不動産の健全なブルマーケットはなぜ生じたか?。マーケット参加者は収益還元法というモノサシで不動産の利回りを調達金利と比るため。日本の未曾有の低金利で、日本の不動産市場は大きな金利裁定が利く市場として先進諸国の投資家の注目を浴びるようになった。*1
長期借入金の金利が超低金利から上昇すればベアマーケットとなりうる。これは切迫した危機か、かなり長い時間をかけて金利が上昇するか?。後者の可能性が高い。日本経済には意欲ある事業家・企業が少なすぎ、日銀が政策金利を上げても(長期の)市中金利がぴったり追随して上昇するとは思えないほどの借入需要低迷状態。市中金利はゆっくり上がり始める、不動産投資家は事業規模縮小タイミングを大幅に間違える可能性は低い。
一方、市中金利が急上昇する局面*2では、旺盛な経済活動があるハズなので、不動産マーケットの暴落よりも、賃料を値上げしやすい環境になっているハズ。
東京の今後数年間の不動産市況の見通し。ワーストシナリオは穏やかなピークアウト。経済活動が本格的に拡大指向に転ずれば、再加速もありうる。
経済が本格的に拡大指向に向かうときには金利正常な水準に向かうのでマネーサプライの増大とともに2段ロケットに点火といくことでしょう、自然な流れのシナリオですね。


次が増田さんのユニークな視点です。
市中金利の水準訂正がほぼ完了したころから、不動産業界の展望は本格的に明るくなる。超長期にわたり、他の先進諸国にはキャッチアップ不可能な優位を日本経済にもたらし続ける。先進国の大都市が完全にクルマ社会かした中で、東京と大阪のみが鉄道社会であるため。


諸国のGDP上昇でエネルギー需給は需要超過に大きく傾くので、化石燃料の価格は上昇基調を保つ。クルマ社会では石油価格上昇に対する有効な対策は無い。また、クルマは空間利用効率が悪い。したがって人口2000万人前後で上限に達する。一方、鉄道社会では人口上限がもっと高い。
人口の多さと圏域民総生産の高さは、規模の経済・範囲の経済・集積の経済の全てにおいて有利な条件となる。


エネルギー価格上昇は、社会インフラの建設費・維持費を高くする。インフラ維持の困難とともに大都市圏・地方中核都市に人を移す必要が生ずる。鉄道社会では人口の集中はマイナスよりもプラスが多い。クルマ社会では通勤のガソリン代を負担しきれず都市圏が縮小するが、東京や大阪ではそういう人の流入で人口が増え、規模の経済が顕著に利く。鉄道運賃とガソリン運賃の差額分の地代が東京・大阪都心部の賃料に上乗せされる。


東京・大阪の優位性の解消は、他の都市での鉄道網の再建を意味するので、遠い先となる。

*1:藤巻さんは「鉛筆をなめちゃうことがあるから注意せよ」とのこと。

*2:藤巻さんは長期金利はポンと上がるかもしれないとプロパガンダしています。