利上げ論

日経夕刊の署名つきコラム十字路にて、中前忠氏が利上げ論を展開しておられた。

預金金利を大幅に引き上げ、利子所得を復活させるとともに、経済に市場メカニズムを再生させ、効率の悪い企業の退出を促し、効率のよい企業が伸びる条件を整えるのである。

と基本スタンスを提示。

ゼロ金利政策が目指したのは、第一に円安の促進による輸出の拡大、第二に資産インフレを促し、その資産効果で経済を活性化させることである。

この部分は藤巻さんと同じ。 ところが、

この政策が成り立つには、世界経済に日本の輸出を吸収できる強さがあり、また世界的に金融が緩和していなくてはならないが、この二つの条件が昨年夏の金融危機以降、なくなってしまった。

と、世界経済は金融緩和気味で新興国の経済は強い、だから資源・食料価格は上昇したという藤巻さんとは逆。
中前氏のロジックは、外需に頼れないから

従って、輸出への期待を捨て、消費を拡大するしかないが、それには家計の所得が増えてこなくてはならない。 企業に賃金引上げ能力がないなかでは、利子所得の復活しか方策は無いのである。

となる。
利上(=金融引き締め)で企業部門は負債を減らしビジネスを縮小させるから雇用や賃金にマイナス影響を与え、生涯にわたる所得の期待を引き下げ(そうなると貯蓄を増やそうとして消費は減ってしまう)、利子所得の増加効果を簡単に打ち消してしまうのではないだろうか。 利上げは円高の経路でもデフレ圧力を生み、デフレ期待が生じると消費よりも現金保有が流行るのではないだろうか。