雑誌Voiceのクルーグマン

以前からの主張と変わっていないように思います。
以下はメモ、青い部分は私のたわごと。


長い目で見ればビッグ・スリーは生き残れないかもしれないが、金融危機の真っ最中に破綻させるのは良い結果を生まない。


デフレ傾向の時に昇給凍結や給与カットを皆で行えば「合成の誤謬」で全体として事態は悪化する。


日本経済は再びデフレに戻りそう。 インフレターゲットを設定すればインフレ率はプラスになり問題はかなり解決するだろうが、これまで日銀はそうしなかったし、日銀はそう約束できるか?、この点で悩んでしまう。 日銀がもっと想像力のあるマネージメントをしていれば日本の経済はもっときちんとしていた*1。 一方、FRBは革命的・積極的に行動し(量的緩和で)長短の金利差とクレジットプレミアムを縮小させ、状況は落ち着きを見せている。


日本の根本的な問題は需要が不十分なこと。 失われた10年の後、輸出で成長したが元に戻ってしまった。 日本は継続的なマイナスの実質金利とする必要があり、唯一の方法は(人々が確信するような)インフレターゲットを設定すること。


危機においては金融政策だけではなく大規模な財政出動が行われるべきである。 でも、政府は産業選択に関してヘタクソだから、必要なのは(人々の)需要を維持する政策。 減税と景気対策にはほとんど関係がない。


円高で多くの日本企業が苦しんでいる。 日本や中国の過剰貯蓄が米国や新興欧州諸国に流れる経路が壊れていて、世界がよりリスキーに見えると(通貨価値の下落が少ないと思われる)円が買われる。 日本に関係ない危機が日本を痛めつけアンフェアだが、世界経済は複雑。

流れを逆にするためには、財政刺激策は一助になる。 米国債につぎ込まれるお金を拠出することで円が下がる手助けになる。 そしてグローバル経済が回復すれば、また円は下がる。
(日本政府がFBを発行し、日銀がそれを買い円を政府に供給し、政府が円売りドル買い介入し、ドルで米国債を買えば、米国の財政刺激政策を助けグローバル景気の回復に寄与すると同時に、日本の金融緩和と為替レートの経路で日本の景気回復にも役立つ、こういうロジックと理解)。


東アジアの共通通貨の大きな問題は、経済ブロックの中で経済ショックが生じると調整が困難なこと。 バブルに浮かれた英国はポンドが急落することで輸出の競争力が増し回復の希望が生まれるが、同じくバブルに浮かれたスペインはユーロ圏にいるがため高失業率苦しんでいる。


日本は19世紀末のイギリスのような状態(人口が縮小し、貯蓄率が高い成熟経済)である。 当時のイギリスは対外投資を促進し、商品の輸出国から資本の輸出国になった。 今の日本で内需がもっと活発であるべきとしても、当時のイギリス同様に、日本も資本の輸出国でなければならない。 日本の経常黒字が米国債に還流する構造は大いに理にかなっている。更に、この時期にアメリカといっしょになってヒットを打てば景気刺激策を通して世界に多くの資産を供給することになる。


デフレが過ぎ去った後の世界。 バブルは絶えず起こった。 これからも起きるに違いない。 問題はそれを対処可能な範囲に収められるかどうか。 1930年代の政治状況ほど現在は悪くはないが、大量失業は決して平和にとって良いことではない。

*1:最近の日銀は積極的に動いている (クルーグマン