「100年に1度のチャンスを掴め!」 by 藤巻健史 (4/25追記)

サブプライム・ローン問題とその後のマクロ経済に関して、藤巻さんのViewがロジカルかつ平明に*1書かれています。
これまでの本のなかで一番わかりやすいのではないでしょうか。


100年に1度のチャンスを掴め! (PHPビジネス新書)

100年に1度のチャンスを掴め! (PHPビジネス新書)


藤巻さんの見解は

私なりのロジックを組み立てた上での楽観論です。 そして、それに乗っ取った*2ポートフォリオを私自身が組んでいるのです。
サブプライム・ローン問題」とは、「金融資本主義の終わり」でも「悪魔が金儲け主義で劣悪商品を売りつけた結果」でも「デリバティブの問題」でも「米国経済の終わり」でもありません。 金融商品の「ミスプライシング」から起きた技術的問題にすぎないと思うのです。

つまり、間違って高値で取引されていた流動性に欠ける商品が値下がりし始めると、流動性に欠けるがために極端な安値となり、それが金融機関の時価会計と絡んで金融市場の流動性危機をおこしそうな状況となった。 この危機感で株価が下がり、逆資産効果実体経済も悪くなっている。
金融市場と実体経済の不調の原因(テクニカルな問題!)は明らかであり、対策もわかっていて、政府と中央銀行は対策をとっている。 構造は変わっていないから、対策によって状況は良くなる。
対策として、各国の中央銀行はマネーを大量に供給したが、マネーの吸収は難しいオペレーションである。 長期的にはドルも円もユーロも下落(つまりインフレ)しても不思議ではない。
藤巻さんもジム・ロジャーズ的見解に移行したようです。 ただし、ジムは米株(米経済)がダメージを受けるようなインフレを想定する*3一方、藤巻さんはそこまではいかないと見ているように思えますが。


藤巻さんのサブプライム・ローンのこの説明はわかりやすい。

低所得者層など信用力の低い人に住宅購入資金を貸すローンです。 通常、金利は高い水準に設定されています。 しかし、彼らが借りやすくするために、当初数年間の金利を低く抑えて返済負担を軽減するかわりに、後になってレートが上がる仕組みのものが多く販売されたのです。
この仕組みはローンの借り手には魅力的に映ります。 金利が上がる前に購入した住宅を高値で売却し、利益を得るとともにローンを返済しようと目論めるからです。

つまり、自分が住むための住宅を求める人ではなく、数年間でキャピタルゲインを狙う人(米国でも投資目的の住宅購入にはプライムレートは適用されないでしょう、きっと)におおいに利用されたのでしょう。 低所得者のマイホーム購入だけではなく住宅投機目的にも利用されたと藤巻さんは示唆しているのでしょう。


資産効果逆資産効果の説明

人は働いて得た収入から生活費を払い、その残金を預金や株、不動産の形にして保有しています。 その「株の値段が半分になってしまった」ということは、過去の労働の対価が半分になってしまったということです。 がっかりして消費を落とすのは当たり前です。

「過去の労働の対価が半分になってしまった」という説明が非常にわかりやすいと思います。 逆に倍になれば不労所得を得て得をした気分が消費を促進させる訳です。


演習問題 : 「藤巻さんが米銀の株価を注視する理由」 の正解?が書かれていました。
株価下落は銀行の破綻を示唆する。 FDICによって10万ドルまで預金が保護されるといっても、手続きが煩雑。 株価が下落すると怖くなって銀行からお金を引き出す。 すると、銀行の運転資金が不足し、流動性危機になる。 そうなると、銀行が新しい貸し出しを行わなくなるので、非金融機関のほうでも資金繰りが苦しくなりビジネスがうまくいかなくなる。 株価は下がる。 個人も消費を減らす。 その結果、実体経済が悪くなる。 米銀の株価が上昇するならば、逆転し、よい方向に向かう。

*1:今回はロジックの一部を省略した「演習問題」が無い。

*2:「則った」の誤植では

*3:だからドル資産をすべて売るとポジショントークしているのでしょう。