池田信夫氏のマクロのview

有名ブロガー池田信夫氏のミクロの見解にはうなづくことも多いが、マクロの見解に関しては納得いかず「???」なこと多い。なぜだろう...、ずっと疑問を持っていた。
最近、ここを見て、理由がわかったような気になった。

20年近くにわたる長期不況が一時的な需要不足によるものとは考えられません。こういう場合、労働市場あるいは金融・資本市場に欠陥があるのが普通です。 90年代には金融システムがボトルネックでしたが、今回の不況では非正社員の問題が騒がれているように、労働市場ボトルネックになっています。

バブル崩壊後、約20年もたてば需給は一致するハズだから日本で豊かさが増えないのは供給サイドに問題があり、モノやサービスの供給ボトルネックでそれらを消費できない、こういう観点なのでは。 だから、人材の適材適所が進めば問題は解決となる、ということでしょう。


さて、供給>需要 という状況は長く続きうるか? 私は長く続いていたと思う。

供給と需要がマッチするよう物価や賃金が下がればいいわけだが、イロイロ抵抗があるから名目賃金は下がりにくく、供給>需要すなわち不況が続き、結果として人々は貯蓄(需要の減少)に励み、需要減からくる資産価格低下期待で投資も振るわない。 労働市場が無いから名目賃金が下がりづらく需給の調整がちっとも進まないと解釈することもできるかも。

グローバル経済下では、需給をマッチさせる実質賃金調整経路には

  • 円建ての名目賃金を下げる (抵抗大、ますます貯蓄しようと努力するので需要(消費)が減る)
  • インフレで名目賃金を下げる
  • 円を安くしてグローバルにみた実質賃金を下げる

があるのでは。
この中では円安が(たぶん)一番痛みが少なく、円安になれば円建てリスク資産価格の下落は停止あるいは上昇して国内での投資の追い風になる。 円安になるような経済政策(すなわち金融緩和)はリスク資産価格上昇とCPIデフレ期待の払拭orインフレ期待を引き起こすから過剰な貯蓄意欲の減少と投資意欲の増加をもたらす。

池田氏はリフレ政策(金融緩和)や円安に批判的だが、私には円安と金融緩和は景気に効くのではないかと思える。

そもそも国内の需要が少ないから純輸出(=輸出-輸入)が大きくて経常収支が黒字で、根強い円高期待の為か稼いだ黒字を(国内での投資対象が少ないのに)円に変えて保有しようとするから、円高になり、自分自身をコスト高にして自分自身の需要(仕事)を減らしているのではないだろうか、グローバル経済では。

結局、デフレに苦しみたくないならば

  • 需要(消費や投資)を増やす
  • 貯蓄したいならば、海外で稼いだ黒字/貯蓄に相当する割合を外貨建て資産で保有しろ

ということでしょう。 金融緩和は需要増を刺激すると同時に自国通貨安としても作用するし、円売り介入は金融緩和効果も持つ。

そして、その上で金融・資本市場や労働市場が効率的にリソースを配分できるよう構造改革をすれば、豊かになるスピードはUpする。

グローバル不況で貿易黒字は大幅に縮小するし、海外の低金利で所得収支も縮小で、ファンダメンタルズの円高要因は消えつつあるのかなあ。

不景気の真っ最中には名目賃金ガリガリ引き下げるよりも容易な調整方法を使えばいいのではないだろうか、こう素人は思う。 もちろん、ちゃんとした労働市場は欲しい。