月刊Voice誌の藤巻さん「円は確実に大暴落する」

大震災と原子炉事故から2か月、そろそろ2つの影響の分析結果が出てくることを期待しておりました。以下は私の視点での要約。


諸々の条件を踏まえるなら、円安こそが現在のあるべき姿と考えている。その理由は

  1. 日本と欧米との金利差。世界経済の景気回復の足取りは確かなものとなりつつあり、4月にECBは利上げ、FRBも年内の利上げが噂される。金利差が開けば先物のドルは高くなり、先物のドルが買われれば銀行は直物のドルを買うため、ドルが高くなる。
  2. 貿易+サービスの黒字激減が予想される。地震により輸出は減り、一方、農産物や復興需要の輸入が増える。外国人旅行者減でサービスの赤字は更に大きくなるだろう。
  3. 「日本売り」、そもそも日本経済のファンダメンタルズに比べ円は高すぎる。今の日本に適正な為替水準は1ドル=200円であっても不思議ではない。

この状況で円が安くなれば、エネルギー価格は跳ね上がり、それに引きずられるかたちで諸物価も上がり、スタグフレーションの起こる可能性がある。

スタグフレーションで経済が落ち込み税収が減り、復興のための財政支出財政赤字を更に悪化させる。今後、財政の制約で身の丈にあった支出制限せざるを得ないとなれば、いまより生活はずっと貧しくなる。結果、経済は大きく均衡縮小することは間違いない。

これまでは、国債入札未達がきっかけとなるトリプル安となり、(しかしそれほど大変な事態にはならず)、円安による復活を考えていた。 しかし、震災により、これまで味わったこのとない地獄を経験するのではないか。 その端緒は国債未達に至らずとも真綿でクビを締められるようにやってくるのではないか。

悲劇を避けるために政府ができることは無い。プリンティング・マネーは禁じ手だが、国債を発行しようにも未達になる可能性が高まり、日銀が引き受ける意外になくなる。 そもそも、来年度は予算編成すらできない状況に陥ると見ている。

増税が議論されているが、増税しても法人税所得税収入は下がる。消費税アップは避けられない。

円安にならねば日本は復活しない、「円安は日本を貧しくする」と円高介入が選択肢に入ってくるようではいつまで経ってもこの国は復活しない。


以前との違いは

  • 震災復興のための財政支出増と、震災と景気悪化による税収減 −−− 復興財源を国債で賄うか増税で賄うかと議論しているどころではない程、深刻
  • 電力不足や製造業のサプライチェインの問題で、せっかく円安になっても、生産をフル稼働できず、輸出で稼げないし、エネルギーを存分に輸入することもできない
  • スタグフレーションという予測、供給制約があるためインフレはマネタリーな現象以上に悪性となる

といったところでしょうか。