武者さんの見解

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35015
タイトルは「日本国債暴落危機説の誤りを正す 日本に必要なのは増税ではなく超金融緩和と円安だ」とあるが、本文をよく読むと...

 それでは日本において将来、ギリシャで起こったように金利が急騰し、財政破綻を引き起こすような危機が現実のものとなるだろうか。
 その可能性はほとんど考えられないのではないか。というのは、金利の急騰は、国債が売られ他の資産に乗り換えられる急激な資金移動が発生する時に起きるのであり、同時に必ず代替資産投資を起こすからである。

 日本国債が売却されるとして、その資金の行く先は、(1)国債より低リスクの現金、(2)国債より高リスクの社債・住宅債券・株式・不動産等の民間資産、(3)海外資産、の3つの範疇しかないが、(1)は危機に対応した日銀のマネタイゼーションが起きることは必至なので、考えにくい。
 つまり国債が暴落するような信認危機の深化に際しては、日本政府部門の債務としての日本国債と貨幣(日本円)との同質性はより強く認識されると思われるので、現金(日本円)が逃避資産になるとは考えられない。

長期金利が急騰して政府と銀行が困難に直面する様なときには、日銀が市場にあるJGBのかなりの部分をマネタイズし、国内のリスク資産と海外資産が買われる、と武者さんは言う。 要するに、ギリシャは勝手にユーロを刷れないが日銀は円を刷れるから円の価値を下げられるから、ギリシャのような政府が身動きがとれないような財政破綻にはならない、ということ読める。
日銀がかなりの量のJGBを買い、また貨幣の流通速度がUpすれば、かなりのインフレになるだろうし、それに先立ちリスク資産価格も上昇するだろうし、

円高・デフレ・超低金利」という異常空間も終わる。

国債暴落が起こったとしても、それは、官僚行政の危機ではあっても、日本経済の危機ではない。


藤巻さんとの差異は長期金利急騰時に政府(政治)と銀行がどう振舞うかという点ではないか。 藤巻さんは市場参加者が必死に金利急騰から逃れようともがくことで一旦は極端なところまで行くと見ているのではないか。

 現在の日本において極論すれば、円安はすべて善である。逆に円高デフレの同時進行は「悪徳」である。デフレは借り手、リスクテイカーを懲罰し、資本主義の精神、アニマルスピリットを萎えさせる。
 またデフレは生産性格差上昇率格差をインフレで埋めることを困難にし、低生産性、内需セクターの停滞と賃金下落を引き起こす。つまり所得配分を歪め、格差を拡大させる。さらにデフレスライドの支給減が行われないために、年金受給者、公務員など非ビジネスセクターの相対所得を引き上げ不公平を拡大する。

こういう視点が主流にならなかったのは日本の不幸だ。 原子炉の崩壊熱の大きさをリアルにイメージしなかった原子力行政と同じくらい愚かだ。