日経電子版 「個人資産を巻き込めば円安にできる」

http://www.nikkei.com/money/column/moneyblog.aspx?g=DGXNMSFK1700N_17042012000000

景気対策は「対処療法としては円安誘導、根治治療として社会主義国家から資本主義国家への移行」だと信じる私に言わせれば、この20年間、ポイントを外した枝葉末節的な景気対策を続け、いたずらに時間と金を費やしてしまったのだ。

と、この20年間を総括して、

100メートル競争で、いくらフォームを改良しても、筋力を増強しても、ユニフォームを軽量化しても、自分のコースだけ120メートルに伸びてしまえば決して競争相手に勝てない。逆に自分のコースだけ20メートルに縮まれば、私だってベン・ジョンソンカール・ルイスに勝てる。競争をするためには、抜本的なところで、他人より有利にならなくてはいけない。せめて同じ条件で競争しなければならない。

と、円安による「対症療法」の有効性を説く。 デフレ→円高→デフレ→円高という無限ループを抜けるために「対症療法」が必要にもかかわらず、日本では為替レートの効果が理解されなかったことはとても不幸だ。

日本は為替を動かせると思っている。それは、日本の国力が(5点満点で)最悪の1の実力しかないのに、通信簿である為替に5(最優秀)の成績(=円高)がついているからだ。

不況で、円高で国内への投資はグローバルにみれば割高で、国内の資金需要がないから放置すると供給は需要に見合う水準まで縮小する。 そうなると倒産・失業で大変なので政府が財政赤字を拡大して国民に貯蓄機会を提供すると同時に需要をつくり倒産・失業を防いできた。 その結果、巨額な財政赤字を積み上げてしまった。 でも、こんなことせずに、国内に資金需要が無いならば貯蓄を海外に還流させれば(外貨資産を購入して貯蓄すれば)円が売られて安くなり、輸出が進むことで経済は自然に均衡しデフレからも脱出したハズ。 ... なぜ、こういう議論が政府や政治の世界で出なかったのだろう。

日本政府の仕事は円高に回っている歯車を逆方向に1回転させることだけだ。1回転歯車が円安方向に回れば、個人金融資産というマグマが歯車をぐるぐる円安に回してくれる。政府に追随するマグマがない他国とは違うのだ。

個人資産の海外シフトで為替が動くのなら、他国も文句のつけようがない。20年間もGDPが伸びない国から、元気な海外に個人資金が流れるのは自然の流れだからだ。

これは藤巻さんが「narrow pathながら楽観論」だったころのロジックであろうところが、

と、言いながらも、国の累積赤字が959兆円(2011年末)にも積みあがった今となっては政府・日銀は「円安政策」を取れないと思う。「時、すでに遅し」なのだ。残念至極である。今や民間金融機関は国債を目いっぱい保有している。景気低迷で融資が減った分を国債購入に向けたからだ。
この状況で、個人が資産を円から外貨へシフトさせたら何が起きるだろうか? 円預金が下ろされて国債の入札に参加する円が枯渇してしまう。

と、今では悲観論。 新規や借り換えの国債を買う円資金が無い → 金利をあげないと買い手が現れないわけで金利が上昇 → 利払いが増えることで政府の財政状況は悪化・金融機関は保有国債のキャピタルロスで財務が悪化 → 市場や国民の疑心暗鬼が拡大し信用不安へ、となってしまう。
信用不安を放置すると自己増殖的に大きくなり恐慌へ進み、日銀はプリンティングマネー政策に追い込まれ、インフレが進む。


3.11で政府の原子力政策が、当面なんとかしのぐこと、それぞれのレベルで利権の追求、本当に分かっている専門家はしかるべき地位にいない、何か起きたら自己保身、といいうデタラメだったことがバレてしったが、政府や日銀の政策も真相は原子力政策と似たり寄ったりだったんじゃないかなー、と思う。 やれやれ。



追記
日経電子版のコメント欄がなかなか興味深い。