日経ビジネスONLINE版インタビュー記事

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121002/237512/?rt=nocnt

藤巻:景気対策としては財政政策、金融政策、為替政策があるが、金融政策と財政政策が限界に達しているにもかかわらず、それらが効かなかったのは為替政策が間違っていたからだ。為替を経済実態に合わせろ、というのが昔からの私の主張だ。

ひとことで言えば、それは日本が社会主義国家だからだ。戦略としては、社会主義国家を資本主義に直せ、というのが最大の主張。資本主義国家になれば、円がこんなに強いわけはない。国債バブルも起こっていたわけはない。円高になる仕組みがそこにあったのだ。

と、いつもと同じブレのない主張。
社会主義という点に関しては

もともと国の仕事は何かというと、国民の生命と財産を守ることだ。もともと社会保障制度ができた原因は暴動を起こさないためだった。暴動が起こると生命の危険、財産の危険が起こるから、社会保障を、年金を手厚くした。それが過度に行き過ぎて悪平等になると、まず1番目にみんな働かなくなる。2番目に財政破綻のリスクがあって、国民が財産を失う。

一番大きい問題は、格差がないにもかかわらず、みんな平等に豊かにならなければいけないという発想だ。その発想自体が社会主義国家のものだし、世界最大の銀行や、日本銀行という半官半民の中央銀行が、国債を買っているのも、市場原理が働いていないということの最たる例だ。

社会主義国家を経済面から捉えると、市場原理が働いていないということだ。市場原理が働いていないから海外に行くべきお金が国内に滞留して、昔は株と土地のバブルになり、今は国債のバブルに行ってしまった。市場原理が発達していれば、より利益率の高い海外へ言っていたはず。

政府機関であるゆうちょ銀行と日銀が国債を買い、市場原理が働かない仕組みを作ってしまっている。

資本主義というのはたくさんの人間が市場に参加して資源の最適配分をする。しかし社会主義は少数の人間がうまく行くだろうと経済をコントロールしている。

円高の根本にあるのは日本国内に経常黒字がたまっていて、市場原理が発達していないから海外へ戻っていかない。要するに戻さない仕組みができてしまっているからで、本来はそれを直さないと戻っていかない。

とのこと。インタビューアが上手にまとめた結果、藤巻さんの論点がクリアになっている。

資本主義国家だったら、GDPが20年間低迷するような国には投資しない。最終的には市場原理が働いて、もうかるところへ持っていく。みんなが円を売ってドルを買う。それで日本が強くなったら逆にドルを売って円に戻ってくる。そういう変動相場制が動くような仕組みを作れればいい。

普通の国なら介入というのは機能しない。だが、日本には1500兆円の個人金融資産がある。それが動き出せば、武器になり、エネルギーになる。1500兆円の30〜40%は海外に行っていたはずなのに、そうならなかった。国内に滞留しているものを海外に戻すには、そういう仕組みが必要だ。

というわけで

一番簡単なのは税金だ。例えば外貨預金のキャピタルゲイン課税をゼロにする。

例えば「マル外」。昔のマル優(少額貯蓄非課税制度)みたいに外貨預金は300万円まで非課税とすれば、それだけでみんな円売り・ドル買いになる。

ドル建て日本国債を発行すればいい。

外貨投資優遇税制とか、マイナス金利とか、日銀の外債購入とか、ドル建て日本国債発行とか、みんなが英知を結集してやればいくらでも方法はある。後は個人はどう動くか。政策は単なるきっかけづくりだから。

と、アレ?昔の藤巻さんの主張が復活しているなー、と思うと

結局、資金は海外に出て行かず、国債をどんどん買ってしまったから、政治家はバラマキ放題になった。故・橋本龍太郎首相が財政構造改革法を作ったころから考えれば、政府債務は約3倍、1000兆円になってしまった。こうなるともう、円安政策は取ろうと思ってもとれない。

と、最近の藤巻さんの主張となった。その理由は

なぜか。いま「明日から円安政策を始めます」と言ったら、1500兆円のお金がみんな外に行ってしまう。円預金を引っぺがしてドルを買う。そうすると、ギリギリのところでパンパンに国債を買っているから、もう国債の入札に応じるお金はなくなるどころか、逆に銀行は円預金を払い戻すために国債を売らなければいけなくなる。そうなったら一発で明日、財政破綻だ。ここまで来ると。もう手がない。残念ながら。

円を穏やかに安くする政策はない。ここまで累積赤字がたまってしまうと、ハイパーインフレと円暴落という経済敗戦が起きて、日本が破綻した時に国際通貨基金IMF)の管理下に置かれ、今度は日本を本当の意味で資本主義国家にしてくれるのだろうと期待している。

政策として残されているのは、大増税、もしくはインフレ税だ。私の言う大増税とは、明日から50%の消費税だが。インフレというのは債権者から債務者への富の移転、国民から国への富の移転だから、税金と同じだ。消費税を50%にするか、インフレ。これしかない。みんなが納得できるようなものではなく、ガラガラポンだ。

もう手立て無しというのが藤巻さんの今の見解。
もっと以前に、貯蓄資金が海外に還流できれば、社会保障費は少なかったから財政支出を縮小しやすかったし、イールドカーブがスティープになれば銀行は利益を出しやすかっただろうに。