藤巻さんのドル建て日本国債 再考

ペイオフ解禁が近づいてきました。銀行預金がおろされ、銀行が保有する日本国債を売るとしたら金利は上昇する、あるいは政府の国債の借り換えが困難になるかもしれません。藤巻さんは「ドル建て日本国債」を提案していますが、その効果を再度考えて見ました(前回は十分に理解できていなかった)。

なお、以下は素人考察なので決して鵜呑みにしないでください。

登場人物 政府、日銀、個人、市場
場面   短期金利: 日本(ほぼゼロ) < 米国、長期金利: 日本 < 米国
   長期金利が上昇しそうなので長期国債はあまり発行したくない

(1A) 個人から市場へ 円売りドル買い (ドル建て日本国債購入のためドルを準備)
(1B) 政府-個人 国債とドルを交換
(1C) 政府-日銀 ドルと円札を交換 
政府が国内支出でドルを支払うわけにいかないので政府の銀行たる日銀に交換を依頼
ここで日銀はドルを資産として円のお札を刷る (重要)
(2A) 政府は為替先物で1年後の円売りドル買いを予約、つまり
政府から市場へ (先物で)円売りドル買い
金利のドルを買い持ちするのでヘッジコストは少ない(金利差ぶん得)
(3A) 1年後、政府は償還予算の円を市場に渡し、先物で買ったドルの現物を受け取る
政府-個人 国債とドル(元本と利子)を交換(国債を償還)
ドルの利子は(2A)の金利差で補填できるので、実質的に円の1年金利
(4A) ドル建て日本国債の借り換えが長期間にわたるであろうことを考えれば
日銀はドル資産を長期の米国債保有し毎年利子を得る

以上の1サイクルの効果
- (1A)で現物で円安ドル高圧力
- (2A)で先物で円安ドル高圧力
- (1C)でマネタリーベースが増えるので潜在的インフレ(円安要因)圧力
ヘッジファンド等投機筋が認識すれば、円売りドル買い投機を仕掛けるであろう
また、円がより余剰になるので短期金利をほぼゼロに維持できる
- 1年後に円安になれば個人は投資額を増して再投資するに違いない
- (4A) 日銀のキャリートレード(ゼロ金利の短期円資金で長期の米金利を取る)で儲けた分は政府に納付されて財政赤字解消に少し役立つ、また米国の財政赤字にも優しい(?)
- (4A) 日銀がドル建て資産を持つことで、円長期金利が急上昇した時の円のパニック的な大暴落をある水準で止めることが出来る

サイクルの始点と終点に着目すると (仮にレートを103円/$とする)
- 個人の103円(始点)が市場で$1に交換され政府経由で日銀の資産になる(終点)
- 日銀が$1と引き換えに発行した103円は政府と市場を経由して個人の$1となる(終点)
- 日銀の通貨発行益($1-諸費用)は納付金経由で政府の収入(終点)

(1A),(2A),(1C)と3重の円安圧力がかかり、マネーを余剰の国から不足の国へ還流させマクロ的効用を高める(?)ことが出来、日銀のバランスシートに負担をかけず(?)マネタリーベースを増やすことで短期金利をゼロに保ち、インフレ期待を作り流動性の罠からの脱出を図り、かつ、通貨発行益を借金返済にまわせる、究極のスキームということを(やっと)理解できました。

国債の借り換えはそろそろ毎年100兆円!に達するので、そのうちの10%をドル建て日本国債とすると、現物と先物で計20兆円の円売り、マネタリーベースの10兆円増となります。投機筋には政策意図がミエミエでマーケットはアナウンスした時点で反応するのでしょうね。

一種のプリンティングマネー政策と言えそうですが、自国国債で自国通貨を発行する訳ではない(ドルが円を担保する)のでハイパーインフレは避けられる?

このスキームを極限まで進めるといずれは日銀資産の大半は米国債ということになり、円はドルにペッグされることになります。この場合の為替レートは別の機会に挑戦してみたいと思います。