黄金の相場学 by 若林栄四
- 作者: 若林栄四
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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以下はかつて読んだときのノートです。
XX年にXXX円/ドルと大胆な予測を書いた本。それを導くロジックについては若林さんは「相場学」と煙幕を張っています。まだ明かせない奥儀もあることでしょうから目くじらは立てません。いついくらになるではなく、若林さんがどう考えているかに注目します。
経済学と相場はちょっと違う。偏ったポジション → エネルギー、波動、行き過ぎがち
マーケットには取引に流動性を与える投機の人たちが参加していて、思惑が一方に偏ると高値でのロング安値でのショートになり、参加者たちがそろってダメだと感じポジション解消を始めると価格は逆方向に動く。これが波動の源で、思惑で行き過ぎ、パニック的なポジション解消で逆方向に行過ぎる。
日本の財政赤字 → いつかはインフレ政策、インフレは円安ドル高に作用する
アメリカの長期金利の上昇 → 不動産バブル崩壊 (不動産を担保にした消費に無理がくる)
相場に立ち向かう心得15ヶ条
- 上がると思ったら買い、下がると思ったら売る。 複雑なことは考えるな。
- 愚者は雷同する。 人についても大きく儲からない、自分自身のアイデア
- 相場は恐怖と欲望のゲーム 損失を被る恐怖(エモーショナルな相場で逆を張るケース)/儲け損なう恐怖(多数派(エモーショナルなほう)にいることを認識すべき)、怖い思いをしなければ儲からないようにできている
- 買値まで戻ってくるような相場は99%更に上昇する。
- 皆が儲かる相場はどこかがおかしい
- 相場は相手を追い込むように動く。 間違ったと思ったらさっさと損切りしろ、損切りしないと発想がおかしくなる
- 全ての戦闘に勝とうと思ってはいけない。 買ったり負けたりして最終的に勝つのを目指す
- ナンピンは禁物。 相場で損失がでたらポジションを小さくする
- 複雑に考えず単純思考で行かねばならない
- 少数派に身を置け。多数派:スローに儲かって猛烈に損をする。少数派:小さ目のポジションで小さく損をし利乗せで持ち高を拡大して大きく儲ける。相場が一気に行くときは損切りの力。恐怖から逃げようと皆が損切りするとき最も相場は走る。
- 材料は相場とほとんど関係ない。 中期的なファンダメンタルズ以外は無視していい。材料は単にきっかけに過ぎない。相場が行きたい方向へ行く。
- 皆が絶対だと思っている時は危ない
- あの時やっていたら...は禁句。 実行しなければ利益は出ない。
- モメンタム「勢い」が大事。モメンタム(マーケット心理のようなもの)が尽きていなければ相場は先へ進む。
- 重要な意思決定は夜やってはならない
Printing Moneyとインフレ
西南戦争:
国庫が空の明治政府は紙幣を印刷し戦費を調達した → インフレ、1ドル=1円から減価し始める。
第二次大戦後:
税収がほぼ無い政府は紙幣を印刷し大陸・南方からの引き上げや国内の政府の運営をやった(らしい)。
'45年9月 15円/ドル → '47年 50円/ドル → '48年 270円/ドル → '49年 360円/ドル
360円は少し円安気味の設定だったのかも知れませんが、円の価値は3年で1/24になってしまった。
アメリカ
市場原理 → 大恐慌 → 社会主義的な官僚制資本主義 → レーガン → 市場原理
外貨需要 = 実需 + 仮需
_実需 = 絶対需要 + 相対需要
__絶対需要 --- 経常収支
__相対需要 --- 株式・債券への投資 (相場・レートにより需給がぶれる)
_仮需 --- 投機的ポジションテーキング (ヘッジファンド、輸出入のリーズアンドラッグズ*1、円借款の円返済)
(この本が出たころ)
対内株式投資: 外国人投資家は為替をヘッジしない
対外証券投資: 日本の機関投資家 70%をヘッジ
(ヘッジしたら儲からないのではないか?)
日米金利差が小さくなっていたのでヘッジコスト(短期金利)が下がる。一方、日米長期金利差があるのでヘッジしてもリターンが取れた。
'03年1月〜'04年8月まで対外債券投資は16兆円、70%ヘッジで11兆円。日米金利差が大きくなるとヘッジコストが大きくなり、ヘッジをはずす。あるいは債券投資そのものを引き上げてしまう。
米金利の上昇 → 日本の機関投資家のヘッジコストが上昇 → ヘッジはずし(円売りドル買い) → 外交金投資家がヘッジをかける(円売りドル買い) → 更に投機の円売りポジションのまき戻し(円売りドル買い)
おそらくこれが若林さんの予想(思惑)のロジックだったのでしょう。
日本の経常黒字: 国内の貯蓄が投資を上回っていること
- 民間企業部門 借入の返済、銀行は戻ってきたお金でJGB(国債)を買った
- 家計部門 高齢化と共に貯蓄率は低下、ゼロ%近い
- 国内に投資機会が無い
景気が回復期に入ると企業は設備投資を行う。 企業部門の貯蓄はプラスからマイナスへ変わる
政府と企業部門の資金需要を海外の資金でファイナンスする必要が出てくる
JGBを海外で買ってもらうためには
① 金利を上げる (リスクに見合う金利)
② 円を安くする (外貨ベースで見て少しの資金で買えるようにする)
財政赤字の制約で金利を上げられないならば円を安くする他に無い。
JGBマーケットのコントロールが難しくなる → 円、JGBへの投機のアタック
円安・ドル高で景気刺激的 → 株価上昇、ただし金利が上昇してきたら株価は上昇しなくなる。
円安は景気にプラス (輸出企業 → 個潤所得・雇用) しかし、インフレと金利の上昇を招く
アメリカの家計部門を含むネット債務残高 GDPの300%
日本の問題 政府の赤字
アメリカの問題 政府の赤字、民間の赤字 不動産のバブル(ファニーメイ、フレディーマック、ホームエクイティローン*2、イギリスの不動産バブルがはじけたら注意)
不動産が薬店すると個人消費が大きく落ちる → 大不況
ドルは安くなるが、円も弱い。
アメリカの長期金利: '06年中まで上昇していく。景気が良い為。金利上昇が消費意欲交代、バブル崩壊の引き金。株価は金利上昇で下落する。
アメリカが貯蓄モード(新保守の思想)になったらどうなるか
経常収支 = 民間貯蓄 - 民間投資 + 財政収支
アメリカ人の借金の経済合理性
- 小さな政府を指向 → リベラル時代に取り過ぎた税金を減税により返す → 財政赤字 → それから政府支出を絞る
- 民間部門だけが富を創造できる → 減税は一時的に財政赤字を生むが長期的には経済を良くする
- 80年代前半 株式市場は良くなかった Equity FinanceyorimoDebt Financeの方が有利だった
- 90年代 株式市場が良くなったのでEquity FinanceでDebutを減らす
- 80年代 不動産ブーム、借金して不動産を買う
- 90年代 自己資金を株式に投じて資産を増やす、借金で消費の為の不足分を賄う
貯蓄が経済合理性にかなうならば貯蓄をする。不動産バブルが崩壊してデフレに入るならば現金や流動性資産を積み上げる。その時FRBはどう出るか?
アメリカ
8.5兆ドルの対外債務 利子を払う 主に債券
6.2兆ドルの対外資産 利子・配当を受け取る 直接投資・株式 (こっちの方がリターンは大きい)
投資収支の黒字 > 経常赤字 ならばサステイナブル