新保生二 新しい日本経済講義

かつて、ブランチャードの教科書 ASIN:4492312609, ASIN:4492312617 を1回読み終わったころにこの本を読み、なるほどーと納得したものでした。

新しい日本経済講義

新しい日本経済講義

マネーサプライ増加率 → 名目成長率の変化 → インフレ率の変化 + 実質成長率の変化
マネタリーべス/マネーサプライが増えても実質の経済が急に成長するわけではない。
マネーサプライの増加ぶんのかなりの部分はリスク資産市場へ流れる
これにより資産インフレが起きる

バブルの原因
円高対策、内需拡大政策で金融緩和 → マネーサプライが増えすぎ → 資産インフレ
日銀は貨幣数量説を見ていなかった、引き締めが遅れた
アンバランスな金融自由化 銀行に金は集まるが大企業は借りなくなった → 投機的なところが低金利の資金を得た

バブル潰し
マネーサプライを軽視して引き締めすぎ → 90年代のデフレへ
金利の引き下げが不十分だった

アメリカ 実質金利が大きく下がるほどFFレートを下げている → 住宅投資・耐久消費財諸費

労働生産性 = 実質生産額 / 投入労働量

生産活動 : 企業
各種の生産要素(労働、資本ストック、土地等)を使用
原材料を投入しモノやサービスを算出する
付加価値は、固定資本減耗と純間接税を先取りした後に、各生産要素に報酬として分配
報酬の総和 = 国民所得

モノやサービス → 中間消費、家計消費、民間設備投資、輸出

生産能力が余っているような経済では、国民所得 = 総需要
ケインジアン・クロス
AS = Y, AD = C + I + G
AS = AD で均衡するから、Y = C + I + G
公共投資乗数効果
70年 1年目 2.02, 2年目 4.14, 3年目 4.51
77年 1年目 2.35, 2年目 3.60, 3年目 3.60
96年 1年目 1.30, 2年目 1.45, 3年目 1.24
Gを増やしてもYはかつてのように大きく増加しない

貨幣数量説
MV = PT、左辺は総支出、右辺は総収入 = 名目GDP
M : マネーサプライ、中央銀行がコントロールしている外生変数
V : マネーの流通速度、制度や慣行で決まり短期的には大きく変化しない
T : 全取引量、実質GDP ... 短期的には需要で変動するが長期的にはサプライ側で決まる
P : 物価水準(指数)

自然失業率仮説
自然失業率 ... 労働市場の構造要因で決まる
マネーサプライの増加率がUpし、インフレ率がUpしたとき
短期的には生産物の価格が期待インフレ率を上回る
需要が強くて価格がUpしたと人々は思い生産を増やす → 労働力が要る → 失業率は自然失業率を下回る
しかし、いずれ、人々は全ての価格が上昇したことに気づく → 期待インフレ率の修正、失業率は自然失業率に戻る。

名目成長率 = インフレ率 + 実質成長率
名目成長率はマネーサプライで決まる
実質成長率はサプライサイドと需要で決まる

経済を刺激して名目成長率を引き上げると、インフレ率と実質成長率も増加する。
期待インフレ率が情報修正されるまで時間がかかる。この間低インフレで多めの実質成長をエンジョイできる
名目成長率増から2〜3年遅れて期待インフレ率の修正が生じる。
あのバブルの時も資産バブルに伴う経済成長からちょっと遅れ(たぶん)期待インフレ率が上昇しCPIの上昇につながった。期待インフレの上昇で長期金利も上がり始める。日銀が引き締めなくても長期金利の効果でいずれバブルは崩壊したのではないか。

経済を刺激(自然失業率を超える) → 名目成長率のUp → 実質成長率のUp → 名目成長率の低下/インフレ期待の修正(期待インフレ率Up) → 名目成長率の低下/実質成長率の低下/インフレ率Up/スタグフレーション

「期待」はどう作られるか

  • 適合期待仮説 -- 現実を参考にしながら期待を徐々に調整
  • 合理的期待仮設 --- 正しい理論に基づいて期待を決める、価格は瞬時に動き硬直性は無いと仮定
  • ニューケインジアン --- 短期的には物価の硬直性がある。最終的には供給と需要で調整される。長期は古典派とマネタリスト

長期の成長率 --- 生産関数で決まる。労働投入量、人的資本(知識)、資本ストックの伸び、技術革新(知識)

ケインジアンクロスが成り立つ想定 : 総供給 << 生産能力、不均衡の状態
普通は自然失業率からの短期の小さな不均衡

アメリカ : 財政赤字が深刻で解決困難なため景気対策としての財政政策をタイミング良く出せない。→ 財政政策を放棄。景気安定金融政策(FRB)

ドーマーの定理 : 名目成長率 > 長期金利 ならば、債務残高/GDP が一方的に上昇することは無い。
長期金利が景気の回復で上昇するならば、名目成長率を引き上げたい政策を実施したい
名目成長率 = 実質成長率(需給ギャップがあれば短期的に変化できる、長期的には構造要因で決まる) + インフレ率(マネーサプライ)
長期金利 = 実質金利(景気) + 期待インフレ率 + リスクプレミアム

積極財政 → 長期金利上昇 → 景気に強いマイナス効果
金融政策の効果の妨げ
イールドカーブの短期側を下げても長期側が上昇してしまう

財政悪化 → 企業、家計のマインド悪化

貨幣需要 --- 資産に富を配分するにあたり、貨幣にどのくらい配分するか、比較的安定しており景気変動で大きく変動する形はとらない。
Md/P = f(Y/P, rb - rm, re - rm , Pe - rm)
Md : 貨幣需要
P : 物価水準
rm : moneyのreturn (通常はゼロ)
rb : 債券のreturn
re : 株式のreturn
Pe : 期待インフレ率

今の日本のマーケットや家計はまだ期待インフレ率が低い (だから長期金利がまだ低い)
マーケットに財政悪化(破綻)を織り込ませないようにすることが財政破綻を避けるために重要。
ならば、「保守的な財政運営 + 金融政策(現在緩和政策を実施中)」 がまっとうな政策ミックスとなろう。
日本への直接投資を増やすため、あるいは日本の企業の投資を増やしてGDP増をもくろんで、法人税を減税するならば、減税分に相当する分、どこかで税収が増えるか、歳出を削減しなければならない。そうしないと、いずれ、マーケットは財政破綻を織り込むことで財政破綻に転がり落ちてしまう、といえそうです。さて、安部政権は歳出削減できるだろうか、税収を増やせるだろうか。今後1年ぐらいの政府の政策はとても重要な意味を持つかもしれないなあ、と思うUndercoverど素人マクロエコノミストです。