「貯蓄率ゼロ経済」--- 再び

学ぶことの多い本でした。

貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる

貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる

幻の国内貯蓄!!!
家計部門の高貯蓄率 → 需要不足 → 供給能力の過剰 = 失業
失業を避けるために、家計部門の貯蓄をどこに投資するか・どこで使うか

  • 企業の借入 (バブル前)
  • 財政赤字を生み出しながら政府が使う (バブル後)

企業部門が借りて投資した結果
経済が発展してくると新たな投資に対するリターンが減る、バブル期には企業部門は借入で収益を生まない投資を行い、バブルがはじけ、投資結果の価値が激減し、借金(名目)と時価のギャップが生じた。ギャップが不良債権
銀行は不良債権の償却を行うが、銀行の負債(つまり預金)が減るわけではなく、長い時間をかけ、超低金利で預金者への利払いを削ることで徐々に償却した。家計部門は普通の経済だったならば複利で増えるはずの貯蓄が全然増えなかった、という形で増えるはずだった貯蓄が幻として消えた。帳尻あわせとなった。

政府が借りて使った結果
政府は国債を発行し家計部門の貯蓄を使った。家計部門は預貯金・生命保険・年金をつうじ間接的に国債(=財政赤字)を保有している。

  • 家計の金融資産 1400兆円
  • 国と地方の債務 1000兆円

家計部門が1400兆円を取り崩して使おうとすると、政府からおカネを返してもらうことになるが、その元手は税!。マクロ的にみると、使おうとすると税金で回収されて使えないことになります。
家計貯蓄率がゼロからマイナスに転じたとき、実際に生じることは、

  • 金利上昇で債券の時価が下落するとか、
  • インフレで通貨の実質価値が目減りする

ことでしょう。債券下落でやられるのは、まだ債券を持っている銀行、生保、年金で、

  • 銀行のキャピタルロスの償却に関しては預金金利が低めになることで最終的に家計部門が支払い、
  • 生保と年金での損失はインフレで価値が目減りすることでやはり家計部門が支払うことになる。

経済が必要とする以上の国内貯蓄を、投資や政府で使っても、いずれ幻のように消えてしまう


戦後を振り返ると
終戦直後 : 戦争で破壊された結果、生産能力 << 需要、このため、必需品の供給を減少させてでも生産設備への投資を優先させ、後の消費の拡大を可能にする政策をとった。
高度成長期 : 所得倍層計画、計画作成者たちは、消費を最大にするためには生産をどう拡大させるか(設備投資は手段にすぎない)と認識していたが、
国内の生産能力が過剰になると、失業の抑制と所得の確保(老後のために多くの貯蓄を形成したいという家計の要望)のために、生産の拡大そのものが経済政策の目的となる。

その結果が幻の家計貯蓄だった!とすると、うーんと考え込んでしまいます。


以上を踏まえると、ガンガン消費し、InternetやGoogleのような未知のフロンティアに投資し切り開くアメリカは経済合理性にかなっている、と納得。