日本の半導体

日経ビジネスオンラインドイツ証券の佐藤文昭さんの「日の丸半導体、再生への最後の選択」http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070510/124459/
というインタビュー記事があります。
私は半導体ビジネスにどっぷりではありませんがユーザーとしてけっこうかかわってきたこともあり、半導体産業の行く末に気をもんでいる一人でもあります。
最先端の半導体プロセス技術を開発し,コスト競争力のある大規模量産工場を1つ作るためには3,000億円とも4,000億円かかるとも言われます。 技術開発も資金調達も大変そうですが,この工場をフル稼働させるような商品を企画・開発して持つのはもっと大変そうです。
大規模量産工場は直径300mmのwaferを3万枚/月も生産できます。Wafer1枚から典型的な半導体チップは(不良ゼロならば)1000個は取れる*1。つまり,1年でチップを3.6億個生産できる!。PlayStation2が最盛期の頃,年間出荷台数は1千万台とか2千万台とか言われていました。大規模生産工場の製造能力はとんでもなくデカい。この工場をフル稼働させるような(半導体メモリ以外の)半導体商品を自前で企画することは大変です。
エレクトロニクス商品の競争は激しいし寿命も短い。 商品のアテが外れると莫大な資金をつぎ込んだ工場が稼動せずつらいだろう。 とりわけ負債で資金調達すると。
こう考えると,ファウンドリー(半導体製造のみを請け負う会社)+ファブレス(工場を持たず企画・設計・販売を行う会社)という組み合わせはうまくリスク分散できる仕組みといえましょう。ファウンドリーは台湾のTSMC, UMCが有名です。ファブレスシリコンバレーや台湾に沢山の会社があります。
ファウンドリーは数多くのファブレスから受注することで,幾つかはアテはずれでも幾つかはうまくいき一つか二つは大ヒットすれば生産ラインを稼動できる。ファウンドリーはきちんとした技術を開発し顧客のファブレスの信用を得れば受注量は業界の景気に比例し変動するので予測はしやすい。 まるでインデックス投資みたいですね。
ファブレスは売上の当たり外れが大きいかもしれないが,巨額な設備投資不要なので外れた時とてつもない大赤字にはならずに済む。資金を持っていれば,あるいは資金調達に成功すればなんとかしのいで次の企画に賭けることが出来る。
すべてを自前でやるIDM(Integrated Device Manufacturing)は不利ですね...。 半導体の景気見通しに自信がもてずキャッシュフローが良くなる景気のピークで設備投資し景気減速で苦しんだり...。 コスト的に不利な小規模工場しか投資できなかったり。
密かに応援していますが,ジリ貧になり滅びちゃうのかなあ,日本のロジック半導体製造。 メモリはたぶん大丈夫でしょうが。

*1:PCのCPUならば500個ぐらい,実際には不良品もあるからもう少し少ない