国際分業の不都合な事実 from 日経マイクロデバイス 2008.8 page 191
日経マイクロデバイス誌の「西岡幸一の産業俯瞰」という連載コラムに、iPodの付加価値を分析した University of California, IrvineのG. Linden, K. L. Kremer, J.Dedrick の「グローバルなイノベーション・システムの中で誰が価値を獲得しているか」という研究論文が紹介されてる。
それによれば、US$299の第5世代iPodの部品は
- 東芝のHDD US$73.39 (ただし東芝による付加価値はUS$19.45, 26.5%)
- 東芝松下ディスプレイテクノロジーのディスプレイ US$20.39 (付加価値はUS$5.85, 28.7%)
- Broadcomのビデオプロセッサ US$8.36
- PortalPlayerのマイクロプロセッサ US$4.94
- 台湾Inventecの組立&テスト US$3.7
- 製造コストの合計 US$144
一方、Appleの販売価格は
- 卸業者へ US$225
- 小売業者へ US$269
したがってディスカウントが無ければAppleの粗利は、US$80 (35.7%)、US$125 (46.5%)。
コラムによると、部品全てが(米国から見た)外国製としても、米国販売価格のうちUS$155はApple・卸・小売で米国内に落ちる。米国企業による部品や知的財産の取り分を考慮すると米国企業の取り分はもっと多くなる。一方日本企業の取り分は$US30未満。中国でつける付加価値はせいぜい数ドルだろう、とのこと。AppleはiPodを製造できないが創造することで、貿易赤字を生むが大きな付加価値を生み出している。
- Apple : 商品コンセプトとデザインだけで部品調達と製造は世界に丸投げ、でも大きな付加価値
- 日本の電子産業 : 横並び商品、小さな付加価値
「物作り」に一生懸命になっても横並びをやっては供給過剰で創造した付加価値を獲得できないですね。 だから他人と違うことをやらねばならない。でも日本の(組織)文化はユニークさを苦手とするから....。 他人と同じことをやりたがらない文化を背景とする米国企業は有利だろうなあ。 頭を使って勝負!。