3月29日 日経朝刊 大機小機 より

剣が峰氏によれば、

日本はモノ作りの国として、堅固な輸出競争力を維持している。 しかし、日本経済の立ち位置は、日一日と沈み続けている感がある。 どこかでボタンを掛け違えてしまったようだ。

と始まり、

かつては海外からの借金を抱えた新興国であり、円は弱く、それだけに輸出主導の経済成長に拍車がかかた。 (中略) 本来はこの段階(80年代後半)で黒字を減らし、内需拡大へと舵を切るべきだった。 だがそうはならず、今や黒字が重荷となって日本にのしかかる。

とある。 黒字が非常に深刻なことのように聞こえる。 氏によれば

黒字が累積するということは、日本から海外に資本が輸出され、その分だけ日本の経済活動や株式・不動産市場にお金が向かわないことを意味する。海外に提供されたお金は投資や消費に使われ、米国をはじめ諸外国の経済拡大に大きな役割を果たした。

へそ曲がりな私は、日本から海外に資本が輸出されたということは、日本の政府・企業・家計部門が海外に資産を保有していることだから、それはそれでいいのではないかと思う。 日本で何かやるにも資金不足で人々を豊かにするための道路や鉄道や港や工場やビルや住宅を作れない状態で、輸出で稼いだおカネが国内の投資に向かわないのは悲しいことだが、そういう状況では金利は高くなるのが自然だと思う。 でも、今の日本の金利は低い。 これは国内にリターンを期待できる投資を見出しづらい(期待キャッシュフローがしょぼいとか、キャピタルロスでやられそうとか)からではないか。
剣が峰氏は資産価格が重要と認識されている模様で、日本経済を拡大する処方箋は簡単だそうだ。

黒字で入手したドルを売り、円を買い戻すことに尽きる。 その結果、国内に購買力が戻り、円は切りあがる。 そうなると、海外から円資産を求めて資本が流入する。 さらに購買力は増し、内需が拡大して経済成長率は高まる。

なんかヘンな気がするのだ。
日本の通貨が金貨とか銀貨ならば、ドル(札,預金,債券,etc.)を売り金や銀に変えて持ち帰ればマネタリーベースが増えマネーサプライも増え景気はよくなると思う。 でも円はペーパーマネーで日銀は不足しないようジャブジャブ気味に緩和していると思う。
デフレでリスク資産ベースでみると高金利だから、ドル資産を売り国内のリスク資産を買えば資産価格は上昇し、良い効果かもしれない。 でも、円高によるマイナス効果を打ち消す以上の国内の消費や投資の増加があるハズというロジックがよくわからい。 日本のリスク資産に買いを入れている海外勢が円高による実体経済の悪化を嫌い売ると資産価格にマイナス要因と思う。
剣が峰氏は、円が上昇すればドルでみた国内資産の価格上昇が期待できるから日本の土地が株に買いが入いる、と主張しているが、円高を予想するならば海外の投資家・投機家はシンプルに先物で円を買うだけではないだろうか。為替と不動産の需給の両方をにらむとか、為替と企業のファンダメンタルズの両方をにらむのは、しんどいと思う。 藤巻さんによれば、日本株の専門家は企業のファンダメンタルズに集中し、為替はその専門家がヘッジするのだそうだ。 だとすれば、円高 → リスク資産高 ではなくて、リスク資産が高くなるような状況ならば円も高くなる、これが自然だろう。


(余談) 小口のデリバティブが使えるようになりつつあるから、資産価格の動きと為替の動きを分離して投資できるよ、分析が楽になってチャンスを見出しやすいでしょ! というのが藤巻さんの最新刊マネーはこう掴む 個人で使えるデリバティブのメッセージではないかと思う。