サミュエルソンの見解

少し前のNBonlineにポール・サミュエルソンのインタビュー記事が載っていた
以下はそれの私の理解での要約とたわごと。


日本の急成長の原動力は西洋の模倣であった。 米国で開発された製品を模倣して改良し、高品質で価格の低い製品を生産し販売する。それによって製品の輸出を増やし、自動車をはじめ多くの産業で覇権を米国から奪っていきた。 これと同じことを今、中国やインドが日本に仕掛けている。 日本はこれまで西洋の模倣者として成功を収めてきたが、新興国の台頭によって模倣者であり続けることはもはやできない

ではどうするか? 研究開発に注力して独創的な製品やサービスを生み出すこと。

日本居住者は誰もやったことのない新しい領域を目指せ、というシンプルな見解。 日本企業は既存ビジネスをグローバリゼーションで規模拡大するという手もあるが、居住者と日本企業とでは立場がちょっと違うから注意しなくちゃいけない。


資産運用が個人も政府も下手。 個人は海外に投資機会があるにも関わらず金利がほぼゼロの預金を続けた。 政府の米国債購入は円高防止という意味もあったが米国債は低利回りでドルは長期的な下落傾向にある。


長期志向に伴う欠点 ...長期志向の下で一度決めたことが誤りであっても、軌道修正をせずに続けてしまうところが問題。


日本は高齢化&若者の減少という状況下で個人も政府も資産を賢く運用して増やさなければならない。 個人の資産を増やすため、日本銀行金利を引き上げるべき


日本の人事制度の問題 ... 日本企業の海外拠点に勤める外国人も、海外拠点で働く日本人社員も不満を抱いている。 経済のグローバル化が進んで海外展開が重要になっている中、英語の得意な人や優秀な外国人や海外に興味を持つ日本人を経営に生かさない。

実にもったいない話だが、この問題と一度決めたことを修正しないことと独創的な製品やサービスをなかなか生み出せないこととは関係しているよなあ ...


サミュエルソンによる日本の失われた十数年に関する見解

 日本が今後も経済を成長させ続けるためには、現在のように輸出主導型の成長に固執するのをやめ、内需を拡大することも必要でしょう。それには、赤字国債の発行によって財政支出を増やすとともに減税を実施することです。
不況が長期にわたった90年代、(中略) 財政再建を優先し、消費税の税率を引き上げた。その代わりに金利の引き下げによって景気を回復しようとしました。しかし、結果は思い通りにはならなかった。なぜなら、金利が低くなりすぎて金融政策の効果が失われる「流動性の罠」に陥ったからです。にもかかわらず、日銀は政策の誤りを認めず、ゼロ金利政策を取り続けました。その結果、不況が長期化したのです。
(中略)
 財政支出を増やして公共投資を拡大せずに、金融緩和に頼ったから、失われた10年と言われるほど不況が長引いたのです。しかも、現在は世界経済が失速し始めている。財政支出の拡大と減税によって景気を刺激すべきです。増税による財政再建は今なすべきことではありません。

バブル崩壊に伴う需要不足と資産デフレから来る不況に対しては、財政支出で需要をつくりだしデフレマインド定着を回避しつつ、財政赤字が膨張していくことで「いずれインフレに転ずる」という期待が発生することで投資(資産に対する需要)や需要が回復し不況から脱するという考えでしょうか。
資産デフレ期に金融緩和で金利を極端に下げると人々の貯蓄と貨幣選好が強まるためサミュエルソンは「日銀は金利を上げるべき」と主張するのかなあ。
さて、いまとなっては累積赤字が巨額すぎて利払いに窮しかねないレベルに達したので財政支出は困難ではないだろうか。


少子高齢化に伴う労働人口減少対策 ... まずは定年退職しなければならない年齢を引き上げて、高齢者を活用すること
実にシンプル!


雇用についてサミュエルソンはグローバリゼーションの影響を冷静に見ている。

 中国など新興国との競争の激化を受けて、恐らく日本人の給与水準は今後、下がっていくはずです。労働時間も徐々に短縮されるでしょう。そうした中、家庭の働き手が2人に増えることは、家計の収入減少を防ぐことにもつながります。

家庭の働き手が2人になることは労働人口を増やすことにもなる。

 雇用形態が多様化することは、企業の経営や経済に柔軟性を与えます。確かに正規雇用に比べて非正規雇用の従業員の給与は少なくなるでしょう。しかし失業して収入がなくなるよりはいい。
 グローバルな競争の激化に伴って、これまでの給与水準をすべての人に保証することはできなくなる。かつての社員全員が正規雇用という姿に戻ることはあり得ません。働く側にとっても雇用形態が多様化すれば、その人の生き方に合った働き方を選択できるようにもなります。決して悪い話ではありません。

ここも冷静に経済学の教科書どおり。問題は日本では経済学の教科書が大学生に読まれていないことか...

 最後に強調しておきたいのは、経済成長率が低くても嘆くことはないということです。

成熟した国は低成長になるのもであり、新興国に投資すれば成長の成果を享受できるはずだから。