ロジカルなエルピーダ坂本社長

日曜日の日経のコラム 「そこが知りたい 中国でのDRAM大型投資 成算は?」 より
今回の投資の概要は

  • 中国蘇洲に蘇州ベンチャー投資集団とともにDRAM生産会社を設立する。
  • 場所は蘇州インダストリアルパーク、工場用地は32万平方メートル。
  • 300mm Wafer
  • 50nmプロセスでスタートし、40nmプロセスへ移行
  • 2010年Q1に40K枚/月、その後、80K枚/月 −−− いわゆるGiga Fabクラス
  • 投資総額 50億ドル

広島に(インテルから資金を引き出して)巨大な工場を作った後、新しいプロセスで台湾・台中で(PCSと組んで)巨大な工場を建設中。 そして、更に将来の微細なプロセスで中国・蘇洲に(中国資本と組んで)巨大工場を作る。 DRAMは価格下落が激しいため、常に最新プロセスの巨大工場で低コスト生産する必要がある。 古くなった巨大工場をいったいどうするの(何を作るの)?と心配していましたが、エルピーダのサイトを見ると、Foudry (半導体の製造委託) ビジネスを目論んでいるようです。 巨額投資の後のシナリオが作ってあるところがロジカルです。

日経のインタビューでは

法人税は10年ほど免除され、建屋の建設や従業員の訓練までしてもらえる。 サムスン電子など韓国メーカーは地元政府から優遇措置を受けており、我々も同じような優遇がなければ戦えない」
−−技術流出の恐れはないのか。
「技術流出のリスクは当然あるが、それ以上の利点がある。 わが社の技術は国の資金援助で開発したわけではない。 他の産業はどんどん中国進出しているのに、半導体だけ問題視される理由はない」
−−広島県と台湾にある既存工場はどうする。
「台湾では増産投資を続けるが、優遇措置のない日本での工場建設は考えない。 まず米国から日本へと動いたメモリーの生産基地は韓国、台湾を経て中国に移りつつある。 材料や製造装置のメーカーも集まり始めた。 もし国がその流れを止めたいのなら相当の優遇措置を講じる覚悟がいる」

日本企業の合理的行動と日本経済の利害は違うと明言するところがロジカルです。
グローバル経済では企業は活動拠点を選べるから、グローバル時代の政府の日本居住者のための合理的行動は、

  • 円を安くして国内での生産活動を割安にする、とか
  • 法人税率を下げて拠点を誘致することで、雇用を増やし、雇用から生まれる所得や消費に課税する、
  • 製造業の一部をあきらめ、別の産業を育てる

となるのでしょう。
米国は3番目を選んだと思いますが、日本はどう決断する?。