藤巻健史の国富論 最終回

http://voiceplus-php.jp/web_serialization/kokufuron/005/index.html

為替を基準に考えるならば「日本経済は最強」であり、株を基準に考えるなら「日本経済は最弱」である。両方がともに正しいというのは、論理的に矛盾している。ならば為替の指標が間違っているのか、あるいは株の指標が間違っているのか。私は、両方とも間違っていると思う。
すなわち円は強過ぎ、日本株は安過ぎである。為替と株のいずれも、日本経済の実態を正しく映していない。日本経済の実力は「世界最強」でも「世界最弱」でもないということだ。

藤巻さんがチェックしているポイント

  • アメリカの3大銀行であるシティバンクバンク・オブ・アメリカJPモルガン・チェースの株価。 アメリカの3大銀行の株価は、金融システム不安の終息度合いを見る大きな指標である。
  • ドル・円の動き。 ドルが上がり、円が安くなってきたら、日本株と日本経済の回復が進む可能性があるということだ。
  • 鉄鋼業の「高炉」への設備投資である。鉄鋼の高炉というのは、建設コストが数千億円という巨額なものであるうえ、30年は使いつづける設備である。簡単にストップや再開ができるものではなく、経営者は短期的・景気的なうねりだけでなく、中長期的な景気見通し等に熟慮に熟慮を重ねて設備投資の判断を下さなければならない。
  • 個人のお金の動き。

藤巻さんは「高炉」への投資まで見てい....。 ナルホド!

日本人には金融資本主義やヘッジファンドデリバティブ金融派生商品)に対するアレルギーが強い。だが、ヘッジファンドデリバティブがどれほど世界経済に貢献したかを考えなければ、フェアではない。

さらに、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)があれほどの急成長を遂げたのは、金融資本主義によって、新興国に多額の資金が集まったからである。金融資本主義を否定し、新興国の人々の貧しさを持続させようという発想には、無理があるといわざるをえない。

世界経済が悪くなった原因が、土地と株が下がるという「逆資産効果」にあることが明らかな以上、逆に土地と株を上げるような政策を行なえば、景気はよくなるということだ。

昨今の派遣社員のリストラという問題についても、突き詰めれば「逆資産効果」によって景気全体が落ち込んでいることに原因がある。土地と株が下がると実体経済が冷え込み、そのしわ寄せは真っ先に経済的弱者に向かう。景気が悪くなって最初に雇用関係を切られるのは、アルバイトであり、派遣社員であり、内定を得た学生だ。地価と株価の上昇を後押しすることは、金持ち優遇措置などではなく、弱者のためになることを理解しなければならない。

そして政府が打つべき手は

  • 土地と株に関する優遇税制 ... お金をもっている人が消費をしないかぎり、景気回復は始まらない。
  • 政府・日銀はそろそろ円高に対して歯止めをかけるドル買い介入を行なうべきだと思う。
  • いまこそ「マイナス金利」の導入を勧める。

そして最後に

普通の人は「実体経済は株に反映される」と考えがちだが、本当は「株が実体経済を引っ張る」のだ。したがって、われわれが日本という国を豊かにしたいと願うのであれば、政府が地価と株価を上げる政策を打つとともに、何よりも日本人自身が日本株を買い、日本企業に直接投資を行なうべきである。そうすれば、やがてこの国は現在とは比べ物にならないぐらい豊かな国へと変貌を遂げるはずだ。

と藤巻さんは結ぶ。