1月12日日経社説「ガラパゴス脱しグローバル市場狙え」雑感

その通りと思いますが、掛け声だけでは...。
日経にも「ガラパゴス」という言葉が登場するようになった。

技術は進化しているが、日本でしか利用されないものが多く、世界のニーズをつかめない。 特殊な生態系を保つ南米沖の諸島になぞらえ、「ガラパゴス現象」と呼ばれている。 持てる技術を世界に広める努力が、国際競争力の再強化には不可能だ。

とある。 「持てる技術を世界に広める努力」は重要だが本質はソコじゃないのでは。
社説では、マズ、次のように指摘している。

ガラパゴス現象の発端は、1980年代後半から進んだ円高にあった。 輸出の採算悪化に伴って国内販売に力を入れ始めた各社は、製品の高機能化をどんどん進めた。 さらに自前技術への固執も重なって、高い開発コストが定着してしまった。

円高がきっかけ。
円高で海外市場で外国メーカーと競争できない、バブル崩壊でB/Sが痛んで為替リスクを取ってまで海外で勝負する気力がでない、等の理由で国内市場で高機能・高性能競争に邁進しているうちに....、クレイトン・クリステンセンのいう「イノベーションのジレンマ」状態にはまってしまったと思います。
商品で実現できている水準が顧客の要求水準よりも低いときは、顧客の効用が大きいゆえ高機能・高性能はおカネになる。 しかし、顧客要求水準を上回ってしまうと、顧客の効用は低下しおカネになりにくい。 その上、日本のメーカーはライバルと同じことをやりたい性分なのですぐに供給過剰となり値崩れしてしまう。
それで困ってハタと周りを見回してみると...、グローバルな顧客要求水準よりもはるかに高レベルの(当然高コストの)商品しか持っておらず、今更グローバル市場に打って出ることもできない。
これが現実ではないだろうか(少なくとも私が属す業界では)
その間に例えばアメリカのメーカーは単なる製造からは身を引き、グローバリゼーションでアジア企業(例えばHon-Hai Precision*1)に任せ、顧客に近いサイドに立ち位置を移したのではないだろうか。 モノで勝負するのではなく顧客の悩み・不自由・困りごとを解決するためビジネスモデル・サービス・モノを再定義し構築しなおしたのだと思う。 米国はモノづくりできないとバカにしてはいけない。

国内市場の成長が続いている間はそれでもよかったが、バブル経済が崩壊し、90年代後半からインターネットが普及すると、情報通信産業をめぐるビジネス環境は激変した。 日本企業はVTRやファックス、複写機などアナログ商品では強かったのに、インターネット時代に入りディジタル商品が主流になると、急速に競争力を失った。

「アナログ」と「ディジタル」という単純な話ではなく、「ディジタル」のフレキシビリティーとグローバリゼーションと組み合わさりビジネスモデルで勝負する時代になったから競争力を失ったのではないだろうか。 戦術の世界(機能・性能・信頼性・etc.)では勝っていたが戦略(ビジネスモデル)で負けたのではないか。

日本企業の垂直統合型のモノづくりは、改良や擦り合わせなどの"職人芸"に頼りがちだ。 アナログ商品の開発ならそれでもよかった。 ところが、ディジタル商品ではソフトの開発力がものをいい、部分最適より全体のシステムが重要になる。

"実現水準<顧客要求水準"の領域ではとにかく「改善」すれば顧客をHappyにできたが、"実現水準>顧客要求水準"の領域では顧客の困りごとを解決するべくビジネスモデル等をも含む「全体システム」を創造しなきゃいけないのだろう。

こうした中で日本企業が活路を見出すためには、ガラパゴスから脱し、グローバルに通用する新技術を積極的に打ち出す必要がある。(中略)通信分野に限らず、日本の技術の採用を外国にも働きかけることが急務だ。

その通りと思いますが、「新技術を積極的に打ち出す」だけでは不足だろうなあ、。 ガラパゴスに迷い込む原因の幾つかは

いずれも根が深いと思うのです。


イノベーションのジレンマに関してはこちら

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

エレクトロニクスやITの領域は半導体のMooreの法則の進化で技術水準がUpしやすい。 そうするとイノベーションのジレンマに陥りやすい。 これで日本のエレクトロニクスがやられたのではないか...。