「資本主義は嫌いですか」 読書メモ その1
非常におもしろく勉強になった本。
- 作者: 竹森俊平
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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藤巻さんがまだ詳細を語らない「リスク資産価格と景気の関係」をわかったような気分になれたました。 以下は年末年始に読んだときの読書メモです。
サブプライムローンとは何?、何がいけなかったのか
証券の安全性は統計的推測によって評価する。地域を分割したプールを作ることで大数の法則を利用する。
住宅ローン債権のプールより元利支払いを原資とし債権を発行する。
- 危険度の異なる証券を発行する。 アーリーペイメントのリスクを取る---高金利、取らない---低金利。
- デフォルト・リスクの異なった証券。 デフォルトをより多く引き受ける---高金利、引き受けない---低金利。
サブプライム証券---歴史が浅い(統計的データが不足)、しかも、'95〜'06は住宅価格上昇傾向(ローンデフォルト率は小さくなる)で安全性が過大評価された。 規制・監督不十分でモラルハザードがおきやすい状況だった。
サブプライムローン債権からシニア(低リスク・低金利)、メザニン、エクイティ(最も高リスク・高金利)債券を生成し、高リスクのメザニン・エクイティを別々の振る舞いをする資産とmixするとリスクが減るという理由で他のローンと混ぜ合わせCDO証券を生成し、CDOを更にシニア・メザイン・エクイティとリスクを分割し...
マーケット取引のためには最低限のパブリック情報が必要。 しかしCDOにはそれが無い。 市場で売ろうとしても値が付かない*2。
'01年から'05年 金利の低下・住宅価格上昇 → エクイティ・エクストラクション(キャピタルゲイン活用) --- 住宅ローンを借り換え、返済額を同じにして低金利分余計に借り入れれば、その分を消費に使える。
アメリカの住宅価格の決定要素
- 個人所得*3
- 投資としての需給関係 (将来の価格の予想)
何かのきっかで住宅需要増が生じ、住宅供給の価格弾力性が小さいと、住宅価格が上昇し始め、自己増殖的メカニズムが動き始める。
モノ・サービスの市場 : 世界的な競争 → インフレ期待を低くする → 名目金利は低くなる
新興国の高成長 → 新興国の貯蓄増(不況圧力、住宅バブル → 消費増) → グローバルな金融市場に資金が潤沢
動学的効率性の条件 --- (その経済における) 投資収益率(実質金利) > 成長率
投資収益率 < 成長率 の時 ... 投資が既に過剰になっている経済、投資しても成長につながらない、投資収益率が過少で投資しても国民の生活水準は向上しない (ならば、バブルに向けたほうが経済にプラスになりえる)
投資収益率 < 成長率 ならば、生産設備拡大になるような真正の投資に資金を向けるより多くの収益をバブルから得られる。 バブルの結果(相対価格が修正されることで)真正な投資の収益率が改善され、投資収益率 = 成長率 となる。
バブルによって国民の生活水準を豊かにするような真正な投資がスタートする。
バブルが来なくても資本減摩で資本設備は減るが、バブルは価格でも調整する。
投資収益率(実質金利)< 成長率 のとき、投資資金が全体としてのバブル資産に向かう(バブルの対象は次々と入れ替わるかもしれない)。 その結果
- 真正な投資に対する資金が細る
- バブルの資金需要で金利が上昇
することで、真正な投資が回復する。
中国の高成長は投資の結果か、技術進歩か。 投資収益率は成長率に見合うほど高いか?
製品の世界需要に拡大の余地があまり無いならば、投資収益率は高くないかもしれない、生産整備拡大を生む真正な投資のメリットは少ない。
合理的なバブルが発生する原因は 投資収益率 < 成長率 となっている新興国側にある。
新興国の投資対象の不足 → バブルとデフレを同時に生む。
新興国で投資対象の供給が少ない → グローバルな金融資産市場に超過需要がある(バブル・資産インフレ)→ ならば(ワルラスの法則で)実物財の市場では超過供給となっているハズ → デフレ
相対価格の調整は、バブル(資産インフレ)あるいはデフレとして生じる。
リスク資産の価格上昇は投資収益率(金利)の低下となる。
金利がゼロになったら両市場間の調整はデフレのみになる。
デフレの経済コストは高い。
デフレの原因は投資対象不足にあるから、人為的に投資対象を作り出せばよい。
どちらかが生じる
新興国で投資対象が不足するのは何故?
- 金融ネットワークの不足 → 現在の所得を大幅に上回る支出ができない、まず貯蓄が必要
- 政府のセイフティーネットの不足 → 退職後のため、万一のため、貯蓄しなければならない
- 急な所得の伸びに比べ消費が追いついていない (家計は一時的な所得の伸びと考える、家計の支出増までに約7年かかる)
- 先進国の投資家・金融機関は新興国の金融ネットワークを所与として投資判断する → 金融ネットワークが不足すると投資しづらい
- 先進国の企業は新興国の政府と交渉して直接投資する*4
- 新興国では法がしっかりしていない ... 怖くて国内投資しづらい
- 新興国の成長の成果が一部の富裕層だけに回るならば、消費されない部分は貯蓄となる
- 新興国の資本輸入による発展は、自国通貨高になるので、輸出に不利に働く