「資本主義は嫌いですか」 読書メモ その2
- 作者: 竹森俊平
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 153回
- この商品を含むブログ (79件) を見る
カネの貸し借り 銀行を中心とした相対取引から証券を用いた市場取引へ
競争化でアルファ*2を作り出す方法 --- 目立たないようにリスク(発生する確率は低いがその被害が大きい)を取る
その背景
- プリンシパル・エージェント問題(歪んだインセンティブ体系)
- 群衆行動(上昇時には群れを成して買い、下降時には群れを成して売る → 金融システム崩壊の危険)--- 一人だけ違うことをやって損を出したくない
今日の銀行の行動
プライベートな情報で貸出をする(情報の優位性を利用することで、ハイリスクの取引ができる)
パブリックな情報のリスクでは市場と同程度しか儲からない。
パブリックな情報のリスクの部分は切り離し市場で売る(自己資本の節約、B/Sを大きくしない)。
結果して最もハイリスクな部分(儲かるところ)が銀行のB/Sに残る。
ファンドは銀行にプライベート情報を提供し、両者はクレジットライン契約を結ぶ。 ファンドが利用料を払うことで、ファンドは銀行よりクレジットラインまで借金できる。 銀行のB/Sから見ると、ファンドがクレジットラインを利用すると銀行の現金が減る。
従来: 銀行は金融システムの安定装置だった。 LTCM危機の時、質への逃避で投資家が債券を売り現金化し銀行に預金したため、銀行には現金がたっぷりあり、それを用いて危機を乗り越えた。
現在: 銀行は流動性危機を救済できない。 テールリスクが発生してファンドが流動性に苦しむと銀行も流動性に苦しむ。 テールリスクの拡大 ← プリンシパル・エージェント問題*3
- 公共財
- 金融取引に参加する人の異なった意図から生じる(売り手とは別の意図を持つ買い手が要る)
流動性のプールが少ないときには、誰もが緊急時の為に流動性を手元に確保しようとし、投資行動が制約される。
流動性が潤沢という認識 --- 流動性を手元に置こうとしない → 金余り
流動性が不足という認識 --- 流動性を手元に置こうとする → 流動性の危機が生じる
価格シグナルの伝達スピードの上昇の結果
- 人々が同じ行動を取るようになる
- 金融システムの混乱
大手金融機関が流動性の為に資産を投売り → 市場の時価が下がる → 時価会計 → B/Sの悪化 → 自己資本率の悪化 → 資産を売る → 市場の時価が下がる → ...
金融イノベーションは市場をより効率的にして金融危機が発生する確率を低めたが、潜在的な金融危機の規模を拡大した。
中央銀行の仕事
- 物価の安定
- 雇用の安定
- 流動性危機の際の最後の貸し手 --- この古典的な仕事の比重が増大してきた