会社に人生を預けるな

年功序列」と「源泉徴収」がなければ日本はもっと変わっているだろうに...、江戸時代モデルを戦国時代モデルにしたらうんと成長するだろうに...、と残念に思う私ですが、勝間さんは『人生のリスク管理』という点で「年功序列」をハイリスクと指摘。


会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)

会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く (光文社新書)


現代では

  • インターネットの発達
  • グローバリゼーション

の結果、いろいろな変動幅(リスク)が増大している。 それゆえ、人生において

  • リスクの予測・計測
  • リスクに見合ったリターンか、リスクを取る・取らないの判断
  • リスクを取る場合、リスクのモニタと制御

が必要となる。


日本が停滞する最大の原因 --- 終身雇用制度
労働期間は約40年。 しかし、インターネットとグローバリゼーションの結果、現在のビジネスモデルは40年ももたない。 ひとつの会社で40年もたない。
世の中の変化のスピードが速くて企業の人材育成スピードが追いつかない。
機械やコンピュータでできるようになる結果、人材を長期間囲い込む意味が無くなる。
社員の能力とは関係ない外部要因で生産性が決まる → 適材適所にしたほうが生産性が上がる。
日本の低生産性はそこで働いている人が原因か → No. 競争要因や外部環境のため → 過当競争・長時間労働


終身雇用制がメリットとなる条件

  • 勤めている会社の業績が成長を続ける
  • 今の会社で十分な能力開発ができる
  • 会社は従業員に対して十分に報いる

しかし、今の日本ではこの条件は成立していない。


過当競争が起きる原因に終身雇用がある

  • 社員を自由にクビにできないから、限界利益ギリギリまで売値を下げて従業員を養おうというインセンティブが働く。
  • 正規と非正規の待遇格差が大きいと、過労リスクを取って辞めないというインセンティブが働く。

成長が無い中での終身雇用制 → 環境変化に対する適応の仕組みがものすごく歪む → 過当競争、低生産性、サービス残業、正規・非正規の大きな不均等
日本は、人が流動しないことを前提に社会のメインシステムを組み立てている → 流動性が低い


終身雇用制の下では、多くの人はまだ目の前にある状況を守る方向に力を使うことはあっても、何か新しいことをやる方向には力を使わなくなる。 人間は年齢と共に保守化する。 過度の保守化はとても危ない。
リスク回避は保守化は、外部環境が変化した場合、対応が遅れかえって大きなリスクを取らざるを得ない状況に陥りやすい。


社会の発展段階において初期の頃は市民の富や教養が十分でないためリスクは中央集権的にお上が取る。 ブルジョアジーの出現で民間に資金や権力がつくと、社会がより活性化・効率化し、「お上」の役割は徐々に小さくなる。 日本にでは江戸時代の士農工商の構造が今でも残っていて「お上」が仕切る。


日本経済の悪状況の原因の一つは人件費の高騰。 年功序列の賃金体系と逆ピラミッドの人口構成で、人件費が本来の状態よりも高くなっている → 低賃金雇用として非正規雇用を生み出す。


==== ここからは私のたわごと ====
どうなればこの構造が変わるか? 政府が財政破綻すればこんな構造は一発で吹き飛ぶとは思いますが、もっとひどい構造になっちゃいかねないので、財政破綻は避けたい。
結局、円安で人件費の割高感を消すと同時にマイルドな資産インフレを起して、景気を正常な状態に戻し、社会の潤滑油として必要とされる2%程度のインフレで社会を調整しつつ終身雇用をなくしていくというのが、出口か。

藤巻さんの円安&構造改革という主張はこういうことを指しているのだろうか。