月刊 Voice誌 6月号 メモ

武者陵司
悲観論と楽観論のあいだの大きな対抗軸。 金融危機の原因と本質をどう考えるか。
悲観論 : 過去の間違った経済構造(米国の債務依存の経済成長)が今回の危機の原因であり、リフレ政策(金融緩和、財政出動、銀行救済)は役に立たない。
楽観論 : 行き過ぎはあったがこれまでの成長は基本的に健全なものであった。 現在の危機の原因は金融制度の欠陥にあった。 資本市場が機能を回復すれば、株価、実体経済は回復する。 各国の空前のリフレ政策の効果が期待できる。
悲観論、楽観論、どちらに分があるか。--- 株価や証券の市場価格が正当なものか、それともパニックによる異常値か?。
楽観派 : 現在の市場での資産価格は不当に安い。
悲観派 : 市場価格は極端な景気悪化を織り込んだ妥当なものである。
武者氏の見解 −−− 市場価格は極端に売り込まれたものであり、是正がおきれば金融機関の資本強化・信用回復・実需買いつくという好循環がおきる。 市場価格もV字回復の可能性あり。
市場の回答
(1) クレジット市場の回復、金融市場の機能の回復
(2) 株価の回復
(3) 実体経済の底入れが鮮明
なぜ日本が米国金融危機のあおりを強くうけたか
(1) 日本は対GDP比で輸出依存度は低いが、主要企業の国際展開の度合いは大きい。 国内ではR&Dと先端商品の生産・資本財の生産・ハイテク素材生産に特化しているが、この構造は在庫変動によって世界の需要変動以上に大きく振幅する。
(2) 官製不況コンプライアンス不況、企業家精神の活力を奪う制度改正、で内需の低迷


松本大
せいぜい10年に1度の出来事。


松田哲氏 「1ドル65円の繁栄論」
円高になって困るのは、一部の大手輸出メーカーだけ。 日本の人口で言えば、せいぜい2〜3%ではなかろうか。
極端な話、1ドル=10円になってもどうしても日本から買わざるをえないような高品質な製品を供給していけばいい。
... 円高論者の円が強くても大丈夫という論拠ってこんな程度なんですね。 輸入品と競合する産業分野も円高でダメージを受けることや、日本人が生産できるならばグローバル企業はもっと人件費が安い国で生産しようと努力するだろう(そのほうがもっと儲かるから)ということが抜けている...。
グローバリゼーション下では仕事は低コストな国に行っちゃうんだから。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090521AT1D2009K20052009.html
日系企業は英語が苦手だからホワイトカラーの仕事を国外に移しにくいかも知れないが、結局はコスト高として業績や成長に悪影響し、ボディーブローのように効いてくる。


ロバート・フェルドマン
生活水準は「労働力生産性」×「参加率」で決まる。 高齢化で「参加率」は減少するから生活水準を守るには生産性を上げるしかない。
日本の製造業が生き残るには資本装備率、つまり従業員一人当たりの生産設備の割合を高めねばならない。


山形浩生
環境バブルがはじけたところでエコ企業が100社ほど倒産し、踊った投資家1万人ほどが大損する程度の話。 そのなかで1000に1つでも当たりがでて、少しでも石油に代わる有効なエネルギー源の見通しがつけば、それは大きな意義をもつ。 バブルが終わったときにも、有益に働くことだろう。


飯田泰之
「円安=外需頼み」という考えは、国際間で労働者や工場の移転がいっさいなかった時代の話でしょう。 為替レートが円安に振れると、日本の労働コストが割安になります。 日本の労働者は質が高いですから、この場合、海外から産業が戻ってきます。 すると国内で雇用が生まれ、彼らが消費することで内需はむしろ増えるのです。


若田部昌澄氏
日本のマクロ経済政策がダメになった理由の一つは、プラザ合意以降、為替を人為的に操作しようと詩tことにあるように思うのです。 本来なら国内の経済目標に専念し、インフレ率を2〜3%ぐらいにして、失業率も自然質量率程度をめざせばいい。 そうすれば為替は、おのずと決まります。 それを下手に操作しようとしたことが間違いだった。