金融緩和と資産価格

朝日(日曜日)、日経(火曜日)と連続して池尾和人 慶大教授のインタビュー記事・寄稿が掲載され、興味深かった。

政策金利や短期の金融市場金利がゼロ近傍にあっても、中長期の金利やリスク資産の利回りまでもがゼロに張り付いているのでなければ、中央銀行が長期国債やリスク資産の購入量を増やせば、何らかの効果が生じることはほぼ間違いない。

問題は、どのような効果がどの程度定量的に意味のある大きさで発生することになるかである。
この点に関しては、率直にいってよくわかってない。 ただし、フローの財・サービスの価格、すなわち物価に真っ先に上昇圧力がかかるということはなく、株式市場や外国為替市場の方が早く反応し、資産価格形成に影響(見方によっては、ゆがみ)が生じるという面がより見られると思われる。

学問的に資産価格の振る舞いはまだ充分に解明されていない、と理解。

むしろ長期金利やリスクプレミアムの低下を促し、資産価格の上昇を生じさせることが、第一義的には信用緩和の効果だといえる。 その結果としての資産効果などを通じて景気刺激効果をもつとみられる。

金融緩和はゼロ金利においても、円安の経路と、資産価格の経路とで、景気を刺激するのだろうと私も思う。 だからこそ、FRBは、FRBはドルを堕落させるかもしれないと思うほど金融緩和をし、為替の経路と資産価格の経路に働きかけているのだろう。

しかし、資産価格形成を政策的に強力に誘導するということには、無視しがたい副作用が伴う恐れがある。

と、教授は急に慎重になる。 確かに、学問上クリアでない以上、自信をもって提言できない。そして、

しかし今後、追加的な緩和措置を継続する、あるいは拡大する過程では、それがもたらす資産価格動向を通じる影響の功罪について、慎重に見極めることが必要になることは疑いない。

と、だんだか予防線を張っているようにも読める...。

資産価格の経路と為替レートの経路を、不確か・弊害があるからダメと封じてしまうと

量的緩和を推進しても、貸し出し機会が乏しいままだと民間銀行の貸し出しはのびず、それゆえ広義の貨幣量の増加も見込めない。 この意味で、規制改革を通じた投資機会の拡大などに取り組まない限り、追加緩和の効果はごく限定的なものでしかありえない。

したがって、

金融緩和はデフレ脱却のための必要条件であっても充分条件とはいえないということである。 十分条件を整えるためには、確かな成長戦略不可欠である。

という結論に到る。

ロジカルではあるものの、リスク資産価格上昇によるB/Sの改善、リスク資産インフレ期待の発生、為替レート経由の日本人の人件費の切り下げという追風無しで、成長戦略を追求してうまくいくかなあ、貨幣を偏愛したまま貧しくなっていきそう。 とほほ。