資本主義のコスト

景気とリスク資産価格はすごく関係しているように思うのだが、マクロ経済学の教科書にはその関係はほとんど出てこない。 そこが不思議だった。

資本主義のコスト

資本主義のコスト

ハイマン・ミンスキーの理論を紹介し、中央銀行や雇用とインフレ率のほかに資産価格にも気を配れ、バブルが発生し破裂してしまったら金融システム救済に金を惜しむな、それは資本主義のコストと主張する。


以下はメモ。


安定的な経済環境が続くと、人々はそれが永続すると思い始める。
自信の高まりが、高リスクの金融手法を生み出す。
たとえ中央銀行がインフレ率の大きな変動を制御できたとしても、自由市場経済でブーム&バースト・サイクルが起きることは避けられない。

メイン・ストリートではシュンペータの創造的破壊の観念を進化の代償として受け入れる。 景気サイクルの最後の局面で、疑わしい金融や市場の崩壊が起き、金利を大幅に引き下げて銀行システムを助けなければならなくなる。これは資本主義を守るためのコストである。

資産価格は付加的なものではなく、景気循環の主要なエンジンだ。 株式市場・不動産市場が正当化できるトレンドを越えて急上昇し、金融が急増している状況ならば、一般物価がどの水準にあろうと金利が低すぎる。

人々はどれくらいリスクを負うことに対する態度を、時間と共に変える。
多くの人がリスクの高い戦力を取り始めると、小さな失望が破壊的な結果を招く。

景気後退の記憶が残る景気回復初期
保守的なキャッシュフローの推計を用いて資金調達。 企業は現金支払いに対し必要以上に現金を準備。 失望をカバーできるだけの現金を持つ。 負債は長期固定金利。 現金が利子・元本の支払いに用いられ、リファイナンス不要。

ゴルディロックスの成長が数年続いた後の景気拡大の中期
負債水準が上がる。 キャッシュフローは利払いをのためだけに使われる。 負債は借り替えられる。 いざというときに手元現金は減少。 負債は短期借り入れ。 継続的にリファイナンス。 借り手の運命は貸し手が信用を継続する意思しだい。

景気後退が迫っている景気拡大の後期
推計キャッシュフローは現金支払いをカバーできない。 いざというときの手元資金は無い。 負債は短期。 追加の現金は担保を増やして借り入れる。 負債の返済には資産価格の上昇が不可欠。

ゴルディロックス的期間が続くという予想に対する賭けが景気後退を引き起こす。

メイン・ストリートにおける創造的破壊は進化の代償に過ぎない。 同時に、市場を不安定にする混乱が自由市場社会で起きる。そのため、政府による救済策は資本主義が避けることができないコストである。

過去の事実に基づいて市場見通しを考えると、時間と共に誰もが似たような意見を持つ状況になる。人々は同じ考えをするようになり、群れを成してバブル的状況が現れ、市場は経済を危険な領域に導く。