藤巻健史の「金融情報」はこう読め!

藤巻健史の「金融情報」はこう読め!

藤巻健史の「金融情報」はこう読め!


藤巻さんのこれまでの著作のなかで、藤巻さんの考え方が一番ストレートに出ている本と思います。


以下は、なるほど!、とか、やっぱり!、と思った箇所のメモ。

しかし私は、ここまで株価が下がってくるとマーケットにそれ以上売るガッツがあるのかどうか疑問に思っていたのです。たしかに今日の時点だけをみて、売りか買いかと問われれば「売り」と答えるかもしれない。 でもそれまでずっと株価が下がってきているのに、そこから売るガッツが出てくるのか非常に疑問だったのです。
 株価が自律反発するレベルとは、トレーダーたちの心の「葛藤」の結果です。

ヘッジファンドのトレーダーたちが先物の売りや空売りで積極的に売っているとき、彼ら自身、更に売るのは怖い。そうなると株価は下がりづらくなる。 そして誰かが買い戻し始めると株価が上昇し始め、すると自分の利益が飛んでしまうからあわててショートポジションを閉じねばならない。 その結果、株価が底をうち反発していく。

だから、恐怖と背中合わせで実際に売買しているリスクテーカーの意見が重要であって、リスクテーカーポジショントークを背景・ポジション・価格レベルを考慮しつつ解釈せねばならない。

アメリカには車が2億台あります。 それなのに年間912万台しか売れない状況が続くのならば、アメリカ人は二十数年間車を買い換えない計算になる。そんなことはあり得ません。

統計データをベースに常識を働かせる。
(藤巻さんはアメリカに車が2億台あることまで把握しているんだ...)。

私の30年近い経験からすると、一人ひとりのマーケット参加者は、アナリストや識者に比べると特別に優れてはいないかもしれない。 けれども、マーケット全体としてはすごく頭がいい存在なのです。

(確か)ジュリアン・ロバートソンがインタビューで「長年マーケットにいるので51%の確率でマーケットの方向を当てることができる」と語ったのを読み、彼ですらマーケットの賢さや効率性を認めていることに驚いたことがあったが、藤巻さんもマーケットは賢いという。 その上で、マーケットの誤解、将来の織り込みの時間差で逆張りの勝負をする。
私はマーケットの賢さに脱帽してばかり。

大きく儲かる時は、マーケットが大きく動く時です。構造変化が起きている時にマーケットは大きく動きます。それは過去の延長でモノを考えてはいけない時なのです。

本業でもこの視点は大切!。でも日本の会社ではトレンドフォロー思考が強いからチャンスを見つけそこなったり見逃したりするんだよなあ。

満期まで待っていれば100のうち50は返ってくるにしても、明日お金が必要な人にとっては、そんな理論価格はどうでもよくなります。たとえ10でも、お金さえ入ってくれば明日を生き延びられる人は、理論価格よりもずっと低い10とか5とかいう価格で債券を売ってしまう可能性があるのです。(中略)
サブプライム・ローン商品の取引が極端に細っていたときです。このような状態の時、「バナナの叩き売り価格10」が唯一の市場取引だとすると、それがじかになってしまう可能性があります。そうなると同じような商品を持っている人全員が、この商品を10で評価しなくてはならなくなります。(中略)
損益計算書の見栄えが悪くなると、株価が下落して資金調達に支障が生じてくる可能性があります。

金融機関が流動性危機に陥ると、新しい貸出が行われなくなります。お金が足りないのだから当たり前です。そこで信用収縮が起こります。(中略) こうなると、一般企業も資金繰りが苦しくなりビジネスがうまくいかなくなります。

薄い市場でミスプライシングされたサブプライム証券の価格が正常に戻る過程で金融機関の流動性危機を引き起こし、それが信用収縮を起こして実体経済を悪化させた。

今回の危機は「資本主義の終りだ」とか、そういう話ではないと思います。単に技術的な問題です。

サブプライム・ローン商品の価格と当初高すぎたという、ミスプライシングの問題だったのです。(中略) 市場に十分な厚みがなかったので、マーケットが適切な価格を見つけられなかったのが原因であると私は考えます。

多くの金融機関が「流動性リスク」を軽視しすぎた結果とも言えるでしょう。

アメリカの一流金融機関であるならば、どんなにレバレージを取り大きなリスクを取っていたとしても、リスクコントロールシステムが作動し瞬時に対応可能です。しかし流動性がない市場では「突然市場が無くなってしまう」ことがあり、そうなると対処不能になってしまうのです。経験則では予想もしなかった価格がついてしまいます。こうなれば経営陣はお手上げです。

マーケットが間違っているという独自のシナリオを立てリスクを取り儲けようとしているのに、流動性のせいで身動きできず大損するのは真っ平御免 −−− 藤巻さんの哲学。

今回の”逆資産効果”とバブル時の”プラス”の資産効果、ともに、土地や株の値段、資産価格が景気を持ち上げたり引きずり落としたりしたのです。ですから株価とは、将来の景気の単なる予想ではない。株価自体が景気を押し上げたり押し下げたりするのだと思うのです。

成熟経済では必要不可欠なモノやサービスはほぼ足りているので、資産効果によるプラスアルファの消費が景気に作用するのだろう。

株は日本国にとって非常に重要なのです。
(中略)絶えずその時代にあった新しい産gy方を興していかなければならない。産業の新陳代謝を促していかなければ企業は人を雇えないのです。
ところで、新しいベンチャー企業に金を供給するのはリスクマネーです。(中略) 銀行からの融資ではないのです。(中略) 若者がベンチャーを興すためには、やはりリスクマネー、すなわち投資家に頼らなければならないのです。ですから、株式しじょうが発展しなければ産業の新陳代謝が行われず、失業者が街にあふれることになるのです。

株式市場が低迷して出口が滞っている(IPOできない)ならば、入口(ベンチャー投資)に金は集まらない、大きく成長しそうな新しい産業や新しい会社は生まれないから、新しい雇用も生まれない。

人が食べるためには、「自分が働く」というのが1つの手段。もう1つは、「お金に働いてもらう」という手段です。基本的にはこの2つしかないと思います。
今、世界はグローバル化しており、日本企業はどんどん海外に進出しています。工場が出て行くということは、日本人の雇用機会が減少するということです。(中略)
自分が働くチャンスが円高で失われているのであれば、日本企業に投資をして彼らに頑張ってもらって、その成長の恩恵にあずかるしかない。

グローバリゼーション、為替レートと雇用、日本人と日本企業、同時に視野に入れるとこういう解が出てくる。

この十数年間、景気が低迷し続けたのは、為替が円高で安定してしまっていたからだと思っているのです。円高で安定していたから、経済も低位安定してしまったのだ、ということです。為替は本来、経済実態に合わせて動くべきなのです。
本来、為替は経済の自動安定化装置のはずです。景気が悪くなれば通貨も弱くなり、国際競争力を回復させる。そして今度は景気がよくりすぎ、インフレ懸念がでてくると通貨も強くなり、国際競争力が減じて景気をクールダウンさせる。それが本来の姿で、だからこそ「為替は経済の自動安定化装置だ」というのです。

これだけグローバル化してくると日本人労働者は、中国人、ベトナム人と仕事の獲得競争をしなければなりません。労賃も国際競争なのです。

だからといって名目賃金を引き下げると、人々は内向きになり既得権維持に向かうからイノベーションが生まれにくくなる。 それを避けるためには為替レートで調整されるのがいいのではないだろうか。東アジアの新興工業諸国にかなりやられているんだから、本来は為替レートが円安になってもいいはずなのに。経営者が為替レートの変動で決算が大きく変動するのをきらって為替レートの固定を働きかけた結果、高すぎるレートで張り付いてしまい、ツケを日本居住者に回しているともいえるのかな。藤巻さんの見解は、企業経営者はデリバティブで為替レートをヘッジし、為替レートそのものは動くようにすべし。

長期金利が上昇すると、駆け込み需要効果があるとともに、景気上昇の予兆だと理解した投資家が投資を債券から株にシフトする可能性もあります。そうなると私が重要だと主張する「株価上昇による資産効果」を期待できるのです。

良い金利上昇でそうなってほしいなあ。

長期的視野には何が必要かというと、「経済のマクロ的視点」であって、「需給で動く小さな動きの分析」ではないのです。
(中略) 需給関係というのはファンダメンタル、すなわちマクロが代ると、手のひらを返したように一晩でコロッと変わります。

なぜ為替が重要かということですが為替は日本経済上昇の天井を決める要因だからです。

また中長期的に見ると、財政の累積赤字問題が日本経済の最大の問題だと思っています。

為替と財政赤字

日銀は今、ヘリコプターこそ使っていませんが、一生懸命、国債を買って日銀券をばあまいています。区グールマン博士が正しければ、インフレの到来です。インフレを抑えるためにばらまいたお金を回収しようとすると、市中に日銀保有の手形か国債を売却しなくてはいけません。そうなると、今までの反動がおこります。国債価格の急落です。

短期金利を引き上げようとすることが、国債の需給バランスを崩し長期金利上昇の引き金となりうる。

もしなにかのきっかけで長期金利が上昇したら、日本では再度金融危機が起きてもおかしくない状況に陥ると思います。

日本ではミクロ政策としては銀行は儲けないと駄目ですよと言い、マクロ政策ではイールド・カーブを寝かせて、銀行がなかなか儲からない状況を作ったのです。こういう矛盾した政策をとったことによって、日本の中小金融機関は金利上昇に対して非常に脆弱な体質になってしまった。

悪い金上昇では、金融危機をともないつつ、政府の財政破綻に向かう。イヤだ。

経常収支の大幅赤字化は、長期金利の急騰と大幅円安を意味するのです。

経常赤字とは、

  • 国内に資金がない → 外国人投資家が買う気になる水準まで長期金利は上昇する。
  • 輸入 > 輸出 → 円安
  • 円安 → インフレ → 長期金利上昇

そして家計部門の貯蓄は人口の年齢分布に左右される。そして時計は進む。


長期金利上昇のきっかけ

  • 株価上昇
  • 経常赤字の巨大化
  • マネーストックの急増 (インフレ期待 → 長期金利上昇)
  • 国債格下げ (→ グローバル債券インでクスでのJGBのウェイト変更 → 売り)
  • 国債引受議論のたかまり
  • 海外の債券市場の崩壊
  • 需給のアンバランス 郵貯の資産の8割は既に国債
  • 入札の失敗 (応募倍率、長いTail、入札後の債券価格の下落)

上記に気をつけて日経を読むことにしよう。