日経 経済教室「転機の内外金融政策」

少し前の日経朝刊の経済教室より
以下は、要約メモ。青い部分は私の感想。


植田和男教授

リーマンショック後の異例な金融政策とは。米国の場合

  • 政策金利をほぼゼロという異例な水準まで引き下げた
  • それを「相当長い期間」ゼロに据え置くという時間軸政策を実施した
  • 中央銀行としてはやや異例の資産を大規模に購入するという措置を実施した

金融・資本市場を安定させ、その後の景気回復の基盤づくりをはたした。米国金融界・学会では大規模資産購入策が資産価格に与えた役割を積極的に評価。

米国のQE1,QE2はよく効いたが日銀の量的緩和の効果は限定的だった。その違いは、海外要因の差異と思われる。

  • 日本の量的緩和時、新興国はまだ立ち上がりの時期だった、べ尾国経済はITバブル崩壊後の低迷から抜け出していなかった。今回は新興国が牽引車の役割を果たした。
  • 米欧の異例の金融緩和時に新興国は自国通貨の切りあがりを嫌い金融緩和政策をとり、それが景気を刺激した。

異例の金融緩和の結果、エネルギーや食料価格が上昇しコアインフレに波及するがある。ECBの4月の利上げはこれを意識している。 コアインフレ率がまだ落ち着いていることを重視すれば、引き締めを焦る必要は無いし、金利引き上げで対応できるという考えもある。

世界経済はきわめて微妙な段階にある。
シナリオ1: 「異例の金融緩和措置」の影響を受けてこのまま回復を続け、先進主要国も本格的な引き締め基調に転じる。
シナリオ2: 世界経済が停滞ないし下向きの局面に移る。
他の先進国よりも弱めの日本経済にとっては「異例の金融緩和措置」をより長めに維持するのが当然の選択となる。この場合、為替レートは円安傾向、長年のデフレ傾向にはピリオドが打たれる可能性がかなりある。しかしその場合のリスクは日本国債利回りの不安定化である。国債の消化を助けたデフレが終焉するのであれば、予想以上の国債金利上昇に留意が必要。
社会保障の支出が毎年増え続ける財政構造となった今となっては、デフレが終りお金を溜め込む必要性が減ると、政府の国債による資金調達にはうんとコスト(金利)がかかるようになる。


浜田宏一教授

諸先進国はリーマン危機を「包括的緩和」で対処した。変動相場制下では一国の金融拡張は当国の為替レートを切り下げ貿易相手国の為替レートを切り上げる。欧米の金融緩和の結果、円高になり日本の景気が悪化した。日銀が金融を緩めれば防げたはず。
震災復興資金のためにお札を刷れば、通常はインフレを加速し国民の実質所得を減価させる事実上の課税となる。しかし、長いデフレ後の現在はお札を刷る拡張政策がすぐには将来の物価上昇期待を生まないゆえ、20兆円の日銀引受は実施可能である。とはいえ、個別価格の上昇がCPIの上昇に結びつかぬようインフレターゲットを設定するのがよい。
金融を一段と緩和しないまま消費税を引き上げるのは政策順序が逆である。増税による景気悪化で税収が減りかねない。
消費税を毎年1%ずつ上げる政策を薦めたい。
変動相場制の下では協調介入に頼らなくても欧米との金融緩和の程度の違いで円高は防ぎえるのである。
市場が20兆円を誤解すると長期金利急騰となりかねないから、こう追い込まれる前に日銀がさりげなく量的緩和をしてくれればよかったのに。福島の原子炉も非常用ディーゼル発電機の1セットを建屋の上のフロアに設置しとけばよかったのに。


中前忠氏

日本は内需主導計税への転換をはかれ。そのために円高こそ必要である。
金利の正常化をはかれ。家計部門の利子収入が減ったから消費が低迷する。ゼロ金利は非効率な企業を温存し、企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止させている。
日本経済の成長率が低下した最大の要因は投下資本量(資本ストック×稼働率)の落ち込みである。内需産業のための投資をどう増やすかが最大の課題となる。ロボット投資を拡大し非製造業の資本装備率を引き上げ、生産性を上げ、賃金を引き上げ、成長をはかれ。
震災は投資機会だがゼロ金利のままでは成長分野に円滑に資金が回らない。
ミクロ的現象をつなぎ合わせればストーリーはできるが、全体を眺めると何だかなあ...。金利を引き上げて非効率な会社が解体されリソースが効率的な会社に再配分される過程で信用収縮で経済が回らなくなっちゃいそうだから、皆困っているのではないか?