「ハイパーインフレの悪夢」

37兆円の税収で利払いが30兆円となると、公務員の給料は払えない、自衛隊の戦闘機は護衛艦は動かない、年金の支払いはストップ、(地方自治体も似たようなものだろうから)消防車やパトカーも動かない、といった状況となり国民生活を直撃し、国民の「何とかしろ」という声に押され政府と日銀はプリンティング・マネーに追い込まれるのだろう。


そういう意識があるのでこの本を見過ごすわけにはいかなかった。


第一次大戦後のドイツも敗戦後の税収不足でやむにやまれずそうしたと思い込んでいたが、「ハイパーインフレの悪夢」(英文タイトル When Money Dies)を読んだところ、そういう側面も確かにあるが、中央銀行が(貨幣数量説を全く信じず、インフレによる)「貨幣不足を解決する」ためにひたすら印刷機を回しまくっていたとのこと。政府が中央銀行国債を引き受けさせたのではなく、中央銀行や銀行等が積極的に通貨を供給したとのこと。 インフレで得をする集団(借り入れができる・借り入れをしている人たち、紙幣を受け取るのではなくモノを生産する人たち)がこの金融政策を支持していたとのこと。歴史の教科書に出てくるハイパーインフレの背景が分かったことは収穫だった。
マネタリーな要因の激しい貨幣価値の下落が続くと、財の交換が滞る(例えば農家が農産物の出荷を渋るようになる)ことで供給不足となりインフレが一層悪化する。特にドイツの場合はフランスにルール工業地帯を占領されることで鉱工業製品の供給も絶たれ供給不足は一段とひどくなった。供給不足になるまではインフレで中産階級が全てを失い、供給不足になった後は労働階級も困窮することになった。 マネタリーな要因と供給不足、二つが重なると悲惨なことになる。


ハイパーインフレの悪夢

ハイパーインフレの悪夢


ところで、日本語版には巻頭に某氏による解説があるが、この本の内容とズレているような気がするが...。