日経Web版 カリスマの直言

日本の家電は6重苦じゃない、「1重苦」だ
と、藤巻さんらしい主張。
わかりやすい内容でした!。

家電メーカーが苦境に陥っている。再建策が練られているというものの、エルピーダメモリも破綻した。ひとえに円高のせいだ。円高の弊害もついにここまできたか、と思っていたら先日、某テレビ局から「日本家電の再建策」についてのアンケートが送られてきた。私は当然のことながら「個別企業の努力の段階ではない。円安政策に尽きる」と答えたのだが、他の識者と言われる方々の回答に驚いた。「円高が大問題」という認識が欠けているのだ。認識がある方でも「問題の一つにすぎない」程度のとらえ方だ。
識者でさえこうなのだから、ちまたで枝葉末節の再建策議論がなされるわけだ、と思った。これが日本経済を低迷させた元凶なのかもしれない。

海外との競争というと、日本人はとかく輸出業者のことばかりを考えるが、彼らだけが海外と戦っているわけではない。すべての日本人が海外と競争している。

こういう視点が無いから、円高は他人事、景気とは関係なし、と考える人が多いのかも。
名目賃金・名目物価の引き下げで均衡しようという圧力下で景気が良くなる訳がないのに。

国内に滞留している1480兆円という巨大なマグマを動かす方法はいくらでもある。「為替の損を他の所得と通算できるようにする」「翌年以降に繰り越しできるようにする」といった税制改正が最も簡単だと思うが、ほかにも過激な例では前回このコラムで提唱した「マイナス金利」や、最近盛り上がってきた「日銀の外債購入」も一案だろう。

役所の利権で「日銀の外債購入」が出来ない...、という議論のレベルの低さが悲しい。

日本経済は円安政策を導入していれば立ち直れたといまでも強く信じている。この十数年にわたってそう信じて主張してきたのだ。だが、残念ながら時間オーバーだ。私のもう一つの懸念(実はこれはいままで述べてきたように円高問題と根は一つなのだが)財政赤字問題が極限まで来てしまったからだ。
いま政府が円安政策を明確にすると、国民がこぞって円預金を引き降ろし外貨投資を始めるだろう。そうすると国債を買い支えている銀行の国債購入資金がすぐにでも枯渇してしまう。明日、財政破綻が起きてしまうのだ。したがって、ここまで累積赤字が大きくなってしまった以上、政府は強烈なる円安政策をとれない。自分が財政破綻の引き金を引くわけにはいかないという袋小路なのだ。こうなると残念ながら市場の暴力に身をゆだねるしかない。

というわけで、市場が恐怖に耐えられなくなる日が来うることを念頭に置きつつ、日々をすごす。