日経新聞電子版「マネーブログ・カリスマの直言」

http://www.nikkei.com/money/column/moneyblog.aspx?g=DGXZZO5198000021022013000000&n_cid=DSTPCS008
藤巻さんが金融緩和はデフレ脱出にあまり効かないと考える理由が書いてあって、非常に興味深い。ここまではっきり書いてあるのは初めてでは。

避難通貨」と称して円を買っていたのは外国人ではなく「外貨を購入していた日本人」の円の買い戻しにすぎないと私は思っている。

一方、国内でジャブジャブになった円資金も海外に流れ出ていない。国内に滞留しているのだ。

私は5年間モルガン銀行の支店長を務めたが、その間ヘッジファンドには1銭たりとも円など貸したことがない。トレーディング資金を融資する銀行などないのだ。それは読者の皆さんが家の購入資金は銀行から借りられても、株の取引資金は借りられないのと同じことだ。

銀行は担保が無いとかリスクが高い相手には貸さない、だからキャリートレードというのは幻。

ソロス氏はドル円先物取引オプション取引で利益をあげたと思われる。それらは直物のドル円に影響を与えるものの、円を海外に流す取引ではない。日本の銀行も円を海外に流していない。

せいぜい海外でドルを借りて米国債を買い金利差で儲ける程度。邦銀は円を海外に流していない。

要は、為替介入をする財務省以外、余りある円を外貨に替える機関が日本には存在しないということだ。1480兆円の個人金融資産も、いまだ数%しか海外に投資されておらず、海外各国と比べると驚くほど低い。

経常黒字を海外に還流させず円で溜め込もうとするから

これこそ、実体経済に比べて円が強くなってしまった最大の理由だ。金融緩和で既にジャブジャブになっている円資金が海外に流れていかない。

以上述べてきたように、日銀が円をジャブジャブに供給しても、その円は外貨に替えられることなく、ひたすら日本国内にとどまった。だから日本にはお金が満ちあふれ、80年代後半は株と不動産のバブル、そしていまは国債のバブルが発生してしまった。「円高バブル」と「国債バブル」の併存だ。そして円高のせいで経済の低迷が続いた。日本にお金が満ちあふれても、国債にしかお金が回らなければ問題を大きくするだけで、景気回復には役立たない。ジャブジャブのお金を民間企業が使わないのは、円高で景気回復が望めなかったからだ。

これだけ金融緩和しても円が海外に還流しないのだから、更なる金融緩和でも円はなかなか海外に還流しない。従ってなかなか円安になりにくく、財政赤字が更に多くなるだけ。
だから、金融緩和ではなく他の政策で円の還流を促すべきと藤巻さんは言う。

海外にお金を流すための方法は(1)外貨資産購入への減税処置(2)ドル建て日本国債の発行(3)マイナス金利の導入――などいくらでもある。既に多くの個人金融資産が海外に出ているほかの国と違い、日本には莫大な資金が国内に眠っている。それを動かすだけで大幅な円安は起こり得る。そして、その動きは海外からの非難の対象とならない。リターンの高いところに個人のお金が流れていくのは市場原理そのものだからだ。

円を海外に還流させないから円高になり、企業は投資せず、雇用が不安なので消費も進まず、政府が無駄遣い?をして国民の所得をサポートするものの財政赤字がドンドン膨らんだ。藤巻さんの説明はロジカルで整合的。