「なぜグローバリゼーションで豊になれないのか」 by 北野一 Part 4

資本コストを統一した場合、何が起きるか?
ユーロの場合ECBが共通の政策金利を決定すると

  • 高成長率でインフレ気味の国では、低金利 or マイナス金利になり、景気が過熱気味になる。 通貨も共通なので、景気過熱で物価、人件費、etc.の上昇で輸出が減少し、景気の過熱を抑える。
  • 低成長率でデフレ気味の国では、高金利の引き締め状態となり、景気が悪化する。 通貨で調整できないため、物価、人件費、etc.の低下で輸出が増加し、景気を回復させる。

つまり、物価の経路で実体経済を安定させる。
一方、独立した通貨の場合、世界共通の資本コストが課されると、

  • 高成長率の国は実質低金利で好景気を享受し、更に為替が弱くなることで価格上昇による競争力低下を打ち消す。
  • 逆に、低成長の国は実質高金利で不景気で、為替が高くなることで不景気状態から脱出しにくい。

グローバリゼーションで、共通資本コスト & 為替変動 を組み合わせると、「景気が悪い国はずーっと景気が悪い」という恐ろしい状況が起きる


本の最後に北野さんはこう書く。

私の仕事は、株式ストラテジストである。 株式ストラテジストは、相場の先行きを予測することを期待されている。 しかし、未来は一寸先でも闇である。 未来の予測は不可能だ。 もっとも、幸か不幸かひとにとっては、現実はおろか過去の出来事でさえ、真相は「藪の中」である。 事実に忠実に過去を再構成し、現実を描写することができるなら、自尊心や羞恥心や嫉妬といった感情によって捻じ曲げられた真相との間に相違を見出せるかもしれない。 未来予測ではなく、その差異を抉り出すことが私の仕事である。 この本によって、少しでもその差異を感じていただけたなら、われわれの挑戦は成功である。

「藪の中」の分析、すばらしかった!。