政府が想定する消費者物価上昇率

6月19日の日経の3面の「経済解説」によれば、「2010年代初頭に基礎的財政収支を黒字化する政府目標の前提になる消費者物価上昇率を、政府は10年度は2/5%、11-12年度は2.7%と想定している」。

財政破綻回避の為に赤字を減らす条件はマクロ経済学の教科書に出ていますが、数字を入れると上記のようなマイルドなCPIのインフレ的な経済が必要と政府は見ているのでしょう。デフレ経済では財政赤字が更に重くなりいずれは破綻、CPIのインフレが行き過ぎると長期金利が上がりすぎてヤバそう、ストライクゾーンは小さいのかも知れません。

日銀と政府の経済運営がうまくいくかわかりませんが、上記のCPI上昇を期待するならばそれを上回るGDPの成長が必要で、そうなる為には短期的にはそれと同等か上回るマネーサプライMの増加が必要となると思われます。貨幣数量説では
 M・V = P・T (ただし長期の世界)
Vは貨幣の流通速度、Pは物価指数、Tは実質GDP
Mはマネタリーベースと銀行の信用創造(貸し出し)で決まるが、マネタリーベースは巨額の為替介入で増えていて、あとは信用創造次第か、と思います。

仮にマネーサプライが増えた場合、実体経済のPとTはすぐには反応せず、余剰のMは値動きが軽いリスク資産市場へ流れ込みミニバブル的状況が発生し、その後時間をかけて実体経済の物価水準が上昇するのではないかと思います。正確な表現ではないかも知れませんが
 M・V = P1・T1 + P2・T2、右辺第1項は実体経済、第2項はリスク資産市場
の第2項がまず膨れ上がるイメージです。

為替レート決定のマネタリーアプローチでは
ln(為替レート対前年比) = { ln(日本のマネーサプライ対前年比) - ln(米国のマネーサプライ対前年比) } - b・{ ln(日本のGDP対前年比) - ln(米国のGDP対前年比) }
と、この式から見るとマネーサプライ増は為替レートに影響を与えそうです。

私の理解では、インフレになる・ならないはマネーサプライに依存しており、それは信用創造に依存するらしく、資産価格の上昇が関連している。おそらくプロのマクロ投機家はマネーサプライの先行指標となるデータをモニタしていて、増加すると確信すれば即座に為替の先物で円を売ってくるのでしょう。素人がマネーサプライの動きを体感することは難しいので、藤巻さんは一般人の投資家向けに「為替レートに注目しろ」とアドバイスしているに違いないと解釈しています。

1ドル140円と上昇で日本経済は急速に回復し資産価格はミニバブル的になる ← マネーサプライが増えた場合
1ドル80円となれば日本経済は暗く資産価格も下落する ← マネーサプライは増えず、デフレが続く

東京都心部の地価が上昇を始め、日銀の金融緩和は続くと予想されれば、実質金利は低下する(名目金利 = 実質金利 + 期待インフレ率)ので、投資案件が動きはじめ資金需要が増し銀行貸出が増加し、マネーサプライが増えていくのではないだろうか、と思います。

デフレが続くと借金が重くなっていき、ついには政府が利払いに窮するようになり、政府が通貨発行益(日銀に国債を買い取らせお札を受け取る)で政府を運営することになるとハイパーインフレとなりかねない。これは避けて欲しい。

以上が私のインフレ予想のロジックです。当局の政策ミスや予想外の経済ショックでマネーサプライが細りデフレ続行となってしまうかもしれません。説明は下手だったかもしれません。理論はMankiwやBlanchardあたりのマクロ経済学の教科書から引っ張ってきています。