トービンのq

藤巻さんの新刊(ASIN:4062131900)を先週末に購入し通読しました。ほとんど既出の内容といえばそのとおりですが、それらが1冊の本の中に順にならんで出てくると、藤巻さんの考え方が整理された形で分かったような気分になります。

今回感じたことや前から疑問でやっと解けた私の疑問は、
(1) 基本的な考え方は最近のマクロ経済学の教科書の内容に沿ってすなおに考えればよい
(2) 藤巻さんは教科書や多くのエコノミストよりも資産効果の威力が大きいと見ている
(3) 円安で資産価格が上昇する理由は、グローバルにみた相対的割安感と国内に産業が戻ることの期待で買いが入るため
(4) 今すぐではないものの国債の利払いに窮した政府がPrinting Money政策に追い込まれひょっとしたらハイパーなインフレになるかも、と藤巻さんはみている、
でした。

教科書では
 GDP = 消費 + 投資 + 政府支出 + 輸出 − 輸入
と書き、消費に対する資産効果は単に「消費者信頼感」という言葉に放り込まれていますが、藤巻さんの観察では「保有不動産価格が倍になるだけで裕福な気分になり人は消費を増やすものだ」と。

同様に藤巻さんによれば、住宅投資は、過去十数年に渡り先送りされてきたゆえ、不動産価格が上昇を始めれば(底を打ったと人々が認識すれば)、需要は大きく長く続くだろうと。

設備投資に関しては、(企業の株の時価総額+有利子負債)/企業が持つ資産の価格 = q (トービンのq)とすると、企業の最適な投資額はqが増えれば増加する(トービンによる理論)、というわけで、株価が増加すれば設備投資も増えるだろうと。

そして、GDPが増えていくような状況では銀行貸出も増加し、あふれたマネーはリスク資産市場に流入しリスク資産価格を押し上げ、それが資産効果として作用し更にGDPを押し上げ、それがまた .....。

藤巻さんのアドバイスに刺激されあれこれ教科書を読んできましたが次はトービンの教科書を読みたい気分です。

為替の先物と直物の関係について:
私は円売りドル買いの先物の注文を受けた銀行は直物で円売りドル買いをして短期のドル債券を買って運用するのかな、と想像していましたが、本に正解が出ていました。正解は、「銀行は直物でドルを買いドルの金利先物市場で金利部分?を調達し、利ざやをのせて顧客に売る」。金利変動リスクを藤巻さんのような金利のプロに任せ、銀行の先物営業部門は低リスクの利ざやビジネスをしているといえましょう。為替先物市場が金利先物市場につながっていることが分かり勉強になりました。この考え方は金融商品の裏側を推理するのに使えそうです。

読書後にここ数日間の政府要人の発言を聞くと「すごくインフレを起こしたがっているに違いない」とうがって聞こえてしまいますね。