累積財政赤字と政府の政策

安部内閣は経済成長重視でインフレ政策をとる?

累積財政赤字(負債)をZ、単年度の赤字をGとすると、

dZ/dt = G

財政破綻を避けるためには、GDP(Yと書きます)に対する累積赤字の割合の変化(つまりZ/Yの変化)が重要です。Z/Yが無限大に発散すると財政破綻

d(Z/Y)/dt = G/Y - (Z/Y)・(dY/dt)/Y

G/Y はGDPに対する年度赤字、
Z/Y はGDPに対する累積赤字、
(dY/dt)/Y はGDPの成長率(名目成長率) です。

累積赤字 Z が発散(財政破綻ハイパーインフレ)しないためには d(Z/Y)/dt がゼロ以下となればいい。

そこで、上の式の値がゼロになるような名目成長率はどのくらいか。具体的な数字を当てはめてみましょう。
例えば、Gを30兆円、Zを800兆円、Yを500兆円とすると、名目成長率は3.8%となります。

デフレ(のトラップ状態)から脱却したとすれば、不況期には生産能力が余っている(需給ギャップ)ので、需給ギャップが埋まるまでは実体経済のインフレになることなく名目3.8%成長できるかもしれません。

問題は需給ギャップが埋まった後ではないか。

労働市場がタイトになるとか資産インフレが実体経済に波及するとかでマーケットがインフレを織り込むと長期金利が上昇し、国債のコストが重くなる。

例えば、累積債務の金利が平均1%上昇すると、利払いの負担が8兆円ふえ、政府支出を8兆円カットは困難でそのほとんどを国債発行で賄うとすると、Gは38兆円となり、バランスをとるのに必要な名目成長率は4.8%となります。

さらに例えば長期金利が5%となる状況で債務の平均金利が今日の水準よりも3%高いとすると、名目成長率6.7%が必要となります。


ところで藤巻さんはこのようなことをおっしゃってた。

(1) かつで市場に優しいと称して短期債を大量に発行した。*1
(2) 5年で日経平均4万円になるとヤバイ。ハイパーインフレになる。10年で日経平均4万円のペースが良い。
(3) 日銀は早めに金利を上げろ。


ここで、ハタと気づきました。藤巻さんのコメントはこういう意味なんだと。(注意:私の誤解かも知れません)

政府の負債が短期側に偏っている。この時点で資産価格が上昇しすぎて市場が実体経済のインフレを織込み長期金利が上昇すると借り換えの都度利払いが増加していゆき、財政が破綻し、ハイパーインフレになってしまう。財務省が債務を長期固定金利に借り換え終えてからならば多少のCPIインフレは耐えられる。借り換えの間、日銀は資産インフレが過熱せぬよう金利で調整するのが良い。


安部内閣がまっとうな経済政策をとるとするならば、
(1) 財政を引き締め続け(財政支出を削減)単年度赤字Gを極力小さくする。
(2) 民間の経済活動が活発になるような政策をとる。
(3) CPIのインフレ期待を発生させる政策はとれない。
となるのではないでしょうか。

デフレから脱却したので何もしなくても(ヘマをやらない限り)経済は回復していくでしょうから「安部政権で経済成長」です。*2

仮に政府がアクセルを踏みたいとしても、政府が積極的にアクセルを踏めるのは政府負債のDulationを長期化してからではないかと思います。

財務省のWebから負債の満期分布を探さなくっちゃ。どこにあるんだろう。

*1:ぼちぼち借り換え時期で、財務省は一生懸命借り替えているはず。

*2:イノベーションが本当に重要になるのは不況からの回復後の経済が巡航速度にのってからの時期ではないだろうか。