「円安 vs. 円高」の藤巻さん

昔読んだときのメモです。宿輪さんには申し訳ありませんが、藤巻さんの部分のみのメモです。例によって、私の理解力の制約で内容を歪んで理解しているかも知れません。

注: 出版は2003年です。


円安vs円高


円安 → 国内の資産価格を上昇させる
資産インフレ → 資産デフレから脱却

円安によって、輸出が増える/輸入品で物価が上がる という議論は次元が低い。

アメリカ : 財政政策*1+金融政策*2 → 十分効果がある
日本 : 財政政策+金融政策 → 資産デフレで効果が出ない

資産インフレターゲット(政策)ならば意味がある。資産価格さえ上昇すれば景気は良くなる。


失われた10年の理由

  1. 社会主義 (大きな政府)
  2. 低下した国際競争力
  3. 土地担保主義 (信用収縮)

円高 → 土地等の資産価格下落 → 経済が収縮


資産効果 : 土地の価格の上昇 =>

  • 信用の拡大 (銀行融資)
  • 不良債権の優良債権化 → 金融システム不安の解消
  • 年金原資の安定
  • 将来の生活に不安を持たなくなる

=> 好景気


日銀の(ジャブジャブの)流動性 → ちょっとしたきっかけで資産にマネーが向かった (バブルの時)
資産価格の上昇 → 個人消費/法人支出 → 実体経済を持ち上げる
解雇されない → 個人消費


日銀 「消費者物価の前年比がゼロ以上になるまでは量的緩和を続ける」 ... バブルのときと同じ間違いをするのでは?

欧米 デフレではなく資産インフレ的

マンデル・フレミング理論 (ケインズ的マクロ経済政策モデルを開放経済に拡張)
金融緩和 → 金利が下がる → 資本流出 → 円安 → 景気刺激効果


機軸通貨 -- 世界の中央銀行 -- 世界の経済が拡張すれば通貨を増やさねばならない

これが正しい見方 => 世界経済の拡張に伴うドル需要以上に経常赤字が大きいとドルは弱くなる。 逆に、アメリカの形状赤字が無くなり、かつ、世界が成長すると、ドル不足でドルは急騰する。

マクロ経済的には為替の循環(的変動)が必要。経営者の発想(為替安定が良い)とは別。

1400兆円の個人金融資産を動かす。 1%で14兆円。 経常黒字の1年分。
起爆剤は大量介入、40兆円ぐらい。FBを日銀が直接引き受けできる。
日銀によるアメリカ国債購入。 円安にしないという日銀の強いメッセージ。
ドル建て日本国債先物で為替をニュートラル化し、実質円金利で発行。

国益(マクロ経済)の為の通貨政策


欧米の大金持ちの基本思想 「強い国のリスク資産を買う」 将来強くなる国を見つけて株と土地を買う *3
(注) 債券はリスク資産ではない。強い国は金利が上がるので債券は下がる。キャピタルゲインが取れない。

マネーは利潤を生むところに流れねばならない。
海外に流れるべきマネーが公的資金に流れた → PKO国債

安政策で景気回復が本物になる。 国際競争力回復。 資産価格上昇。

アメリカ : あらゆる経済政策を投入。 イラク戦争で効果が表面に出てこなかった。
日本 : 資産デフレで不況がとてもひどかったので政策の効果が出なかった。資産デフレに陥らねば伝統的対処で十分。

為替は本来は景気のスタビライザー。通貨の強い国はふつう経済も強い。

日本株 アメリカ株への連れ高。アメリカ経済に引っ張られて回復する可能性。 超悲観論から普通の悲観論へ。

アメリカ株上昇持続の可能性
日本の大量の量的緩和/介入 → アメリカ国債購入 → 米金利に作用

円安にならなかったら → 日本版通貨危機 ハードランディングとなり実体経済(株価、労働市場)にダメージ
最悪のシナリオ: 不況下の大幅金利上昇、円高で輸出がダメになると → 数年後に経常赤字 (マネー不足で国債の買い手が無くなる)

介入 :本来、民がすべき経常黒字の海外還流を官がやること。

円高 → 輸出が減る → 経常黒字が減る → 数年後に赤字化
国内のマネーが減るので財政赤字をファンディングできない → 海外の資金を使わざるを得ない。アルゼンチンやアジアと同じケース。不況下の長期金利上昇。(外貨で外国人に国債を発行した後に円安になると利払いや償還が思い負担になるため円安で経済を刺激する政策がとれなくなる) 。長期金利上昇+不況

マーケットが効率的でマネーが回るならば介入は不要。黒字のマネーが海外(国力の強いところ)に戻るシステムが要る。

介入 → 米国債買い → 流動性供給 ... 国際協調によるアメリカへの援助

円安に対するアメリカの抵抗が小さい --- 財政赤字ファイナンス
170円/ドルになったら大幅な金融引き締めを考えるような景気になる。

1998年4月10日 (当時約150円/ドル) 2兆6千億円のドル買い介入 → 円高に戻ってしまった

個人資産1400兆円。海外に持ち出せば国力が回復する。30兆円〜40兆円の大量介入で個人金融資産を海外に出すきっかけを作る。

(藤巻さんの)アメリカに対する見解 日本に対するよりも強気。これから資産効果が出る。インフレ抑制のためのドル高が必要となる。

円安 → 国内の産業が有利になる → 産業のためのリソース(土地)が要る → 資産価格上昇 → 投資効果 → 銀行がリスクをとれる → マネーが回る → 産業が元気になる

バブル前 日銀の流動性供給 → きっかけもなく土地・株が上昇 → 実体経済を持ち上げる → 設備投資 → 実体経済 ....
解雇されないこと → 個人消費GDPの60%)増 → 実体経済

資産価格上昇にはきっかけが必要 → 円安がきっかけになる。

財政政策 → フル出動 → ダメ
金融政策 → ゼロ金利 → ダメ
もう通貨(為替)政策しかない。

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この本が出版された後、財務省は超大型の為替介入を行い、日銀は資産を膨らませ真似たリーベスを増やしました。財務省は介入によって得たドルで米国債を買い、米国の金利低下(流動性供給)で米株が上がると同時に、外国人投資家は日本株を買い始めました。為替介入の効果が太平洋を往復して戻ってきたようだ、と思ったものです。その後、グロソブの大人気で個人金融資産が外貨ポートフォリオを増やし始め、ジワジワと景気も大不況から正常状態に向かいつつあるようです。振り返ってみれば、ほぼ藤巻さんの主張の展開だったように思えます。1ドル200円にはなりませんでしたが、為替は藤巻さんをもってしても「難しい」というシロモノなので、私は為替に関しては古典派的長期レンジ(?)で見るようになりました。為替や日経平均の予測が当たるか否かではなく、ロジックのとおりに日本経済が動いたと言う点で藤巻さんはすごい。

key word : 藤巻健史、通貨政策、円安、資産効果、為替介入

*1:ブッシュJr.政権の積極財政

*2:FRBの大胆な利下げ

*3:ジム・ロジャーズの考え方と同じ