2月6日 日経夕刊 十字路

以下はJPモルガン証券菅野雅明さんの「日銀お墨付きの円安が始まった」の私の理解による要約。


日銀 1月の利上げ見送り → 利上げのテンポは市場の予測よりも穏やかなことを事実上公言
FRB 中期的インフレ懸念を繰り返し表明 → 市場の利下げ期待を沈静化
ECB 再利上げをほのめかす
日本は超低金利維持、USは金利維持、欧州は利上げ => 金利差の期待の維持で円安が加速する
日本は対外純債権国なので円安で負債に窮する事はない。
デフレ対策にも円安は有効*1
中央銀行の信任低下を伴う円安が危険。円安が持続不可能な水準に達すると反動の円高*2に苦しむことになる。

日銀が利上げを見送っても、利上げしてもその後の利上げを中断すると投資家が受け止めれば、過剰な円売りが発生する。過剰な円安を防ぐためには「今後とも利上げを継続する」というメッセージが重要。
大幅な円安は超低金利が続いている結果起きた資産バブルの一形態に過ぎない。円安を為替介入で押さえ込んでも、他のリスク資産(不動産、株、REIT)でバブルがおきよう。
資産バブルは物価が安定しているときにおきる。足元の物価だけをみて金融政策を論じることは危険だ。日銀はforward lookingな金融政策を実行できるか否かの岐路に立っている。


バブルがおきたらどうなるだろうか。私なりに整理してみました。
前回は、低金利の継続jを信じた市場が借金で土地や株を買い、それを担保にまた土地と株を買い、土地があまりに値上がりし国民が怒りまたバブルがCPIのインフレに転じそうになり、日銀が大慌てで金利を引き上げまた政府が貸し出しを絞ることでバブルは崩壊した。
バブルがおきたとすると、実体経済は絶好調となり税収が増え一時的に政府はハッピーだが

  1. 資産バブルから(いずれ)CPIのインフレに転じたとき、日銀は金利を引き上げインフレ退治を迫られるが、金利を引き上げると政府の借金の利払いが苦しくなる。かといって低金利を維持すると、市場がインフレを織込み長期金利が上昇し、結局政府が借金の借換をする度に利払いが苦しくなる。
  2. 資産バブルがおきちゃった場合、日銀や政府がバブル潰しに乗り出さないとしても、いずれ市場がリスク資産を買い続けられなくなった時点で「信用恐慌」としてバブルは崩壊する。信用創造=貸出 の急激な巻き戻し(マネーサプライの縮小)で実体経済も窒息する。
  3. 前回のバブルの崩壊は国内の家計部門が幻の国内貯蓄として今後もツケを払い続けることで決済したが、次のバブル崩壊時には家計部門の貯蓄率はゼロ近辺なので、低金利国債を発行し需要の落ち込みをカバーする政策はもう使えないだろうなあ。だらだらと長い大不況ではなく大恐慌に突っ込むパターンかもしれませんね。

一時的には楽しいかも知れませんが、ロクなことは無いように思えます。


日銀がforward lookingな政策で金利をジワジワと持続的に引き上げる政策に対する見解でエコノミストや政治家や識者の財政赤字とマクロ経済への認識を窺い知ることができるかもしれないなー、と思います。次の選挙は唯一この観点で投票しようかな。

*1:例えば藤巻さんのロジック:円安で実体経済の回復を見越した投機資金が日本のリスク資産を買い、リスク資産価格の上昇が資産効果実体経済の浮上を更に押し上げる

*2:投機資金のポジション解消の円買いと実需のヘッジのための先物の円買い