フリーランチ投資家 by 岡崎良介
内容を大胆に要約すると、
(1) 海外債券、海外株式インデックス、日本株インデックス、それに日本債券で長期の国際分散投資で、売買タイミングに気を使わず楽チンにリスクを抑えつつ資産を増やそう、
(2) 経済、景気循環に対する考え方、
(3) 日本の景気循環のとらえ方 (日本株インデックスの売買のタイミングのとらえ方)。
- 作者: 岡崎良介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/04/08
- メディア: 単行本
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ベテラン ファンドマネージャの智恵や経済や景気循環に対する考え方を知りたい、という意図で読み、記録したメモです。本の要約というよりも私の関心を引いた箇所のメモです。
資本主義社会においては常に金利と株価(リスク資産価格)のいたちごっこが続く。
景気循環 --- 数年で一巡するサイクル
10年単位で変わる「時代」 --- 景気循環よりも人々の行動の広範囲に影響する*1
バブル時代までのやり方 負債でバランスシートを膨らませ資産形成する --- マネーサプライの成長が 10%/年 だったため可能だった。
バブル崩壊後のやり方 貯蓄、できるだけ負債は抱えない、さっさと返す --- マネーサプライに減少圧力
郵貯 '89年 126兆円 → '93年 260兆円 (家計部門はリスク資産を売り、リスクフリー資産に乗り換えた)
'03年 マネーサプライが増えないのに流動資産市場が上昇に転じた --- おカネを借りずに買う人が現れた、高リスクを取ろうとする集団の出現、海外からの資金の流入
日本株、日本債券、外国株、外国債券 --- これら4つの価格はバラバラに動く --- 月を跨いで連続して4つが同じ方向に動くときは経済に大変化がおきている。
全てが下落するは、日本株と債券が両方売られ(人々が現金を求め)、外貨が売られ円が買われた(あるいは海外でも人々が現金を求めた)場合、すなわち、リスク資産を売り、究極のリスクフリー資産である通貨に変えようとしていることを意味します。逆に全てが上昇するのは、通貨を手放しリスク資産に買いがドカンと入っている状態ですね。
人々がリスクを取るか嫌うかを見極める。
- 長期の景況感
- 固定金利の水準
<投資・利子・償還> <企業部門> <実体経済>
家計 ---(お金)--> 実物資産(生産手段) --> 財・サービス
家計 <--(債券)--- 実物資産(生産手段) <-- お金
家計から長期固定金利で吸い上げられたおカネは満期(例 5年、10年)になるまで戻って来ない。戻ってきた時点で、資産への再配分が行われる。
高すぎる固定金利 --- リスクを取ることにブレーキを踏む --- 実質金利が高金利ならば債券で十分!
低すぎる固定金利 --- リスクを取ることにアクセルを踏む
資産運用の方針
リスクを嫌う時代 --- 全体のリスクをいかに下げるか
リスクを取る時代 --- いかにリターンを上げるか
「リスク資産の時代が来た」 ... 相場観はこれひとつでOK
長期の予想
- フリーターの増加 → 消費・税金・年金に負担となる
- 高齢化
- 中国経済の躍進
産業構造は急には変わらない。日本が国際競争力を徐々に失い、同時に生産拠点を海外に移す。長期的かつ大きな円安になろう。その途中、大きな円高にはならない。円高になっても事後的に円安になる。
貯蓄 → リスクの無い資産 → 銀行は国内に投資(融資)先が無いので国債を買う → 財政赤字となった。
ゼロ金利のため、リスクの無い資産から外国債券におカネが流れた。(日本人の金利選好は強い)。いずれ外国株へ流れるだろう。
長期の予想を立てるときは景気ではなく経済(成長を生み出すための仕組み)を見よう*2。
財政赤字に対するアプローチ
- 米国型 景気回復で自然に解決させる
- 欧州型 必要ならば緊縮財政
短期の投資の基本は景気予測、見るべき指標
フリーランチ投資家の資産運用
- 毎月チェックすること
- 上の3つの指標
- 国内債券、国内株式、外国債券、外国株式 の対前月の Up/Downの方向
- 四半期毎にやること : ポートフォリオのリバランス
- 年に1回やること : 投資した銘柄・ファンドが指数をどれだけ上回っているか*3
投資活動は 戦略 → 執行 → 精査
毎月のチェック・精査はプロとアマを分けるポイント。たった一人でもプロに負けない戦略会議を月に1回開催する。
私の反省: 去年、多忙にかまけてほったらかしていた時期がありました。そのツケはちゃんと回ってきました。
人々がリスクを嫌うかリスクに寛容になるかは時代が決める要素が強く、いったん転換すると相当長く続く。
デフレの根本的な原因は人件費の削減(→消費の縮小)、雇用が安定すればデフレは払拭される。
そうなれば、いずれ金利上昇。ただし、しばらくは円高リスクが残るので金利は大きく上昇しないだろう。
岡崎さんは、為替レート(円高リスク)と金利がリンクしていると主張しています。なぜ?
私が思うに、円高リスクが無くなる(円安トレンドがはっきりする)と家計部門のおカネが海外に流れていき国内が資金不足気味になるため。あるいは、高齢化で貯蓄率がゼロになるころには、経常収支もほぼゼロなので円高トレンドは消失し、同時に国内の資金提供者が減少するので資金不足で金利が上昇するということかも。
岡崎さんは人々のリスクに対する態度の転換を見出したらすぐに投資戦略を大胆に転換しています!。。
「戦略→執行→精査→そして軌道修正」、これを個人の資産運用でも規則正しく淡々とやれるようになりたいものです。