週刊エコノミスト 5/1・8合併号 世界経済「黄金の10年」

週刊エコノミストの特集は、世界経済「黄金の10年」です。たしか3年ぐらい前までの経済週刊誌の特集は「世界同時不況」だったことを思い出すと、日本のメディアの論調は極端から極端へ振れますね。「世界同時不況」の恐れがあるときにこそ勇気を出すことが重要で、「黄金の10年」特集が今後も続くならば警戒が必要かも知れません。

景気サイクルが下りに向かうきっかけは
(1) インフレを警戒する中央銀行の金融引き締めつまり政策金利利上げからくる長期金利の上昇
(2) マーケットがインフレを織り込むことで長期金利が上昇
だそうですが、世界的に好景気にもかかわらず長期金利が上がりにくい。なぜか?。JPモルガン信託銀行の榊原氏はトム・フリードマンの「フラット化する世界」を引き合いに出しつつ
(1) 世界的な価格競争
(2) 旧東側や発展途上国の人々の西側経済への参入
を重要ポイントとしてあげています。おかげで労働は希少価値が低いリソースになってしまった。一種のアービトラージです。
グローバリゼーション3.0の世界ではグローバルにアービトラージが行われ、結果としてリソースが最適な方向に再配分され、経済をいっそう発展させる。
またアービトラージで経済の変動要因が世界的に平滑化(リスク低減)される。リスク低減が長期金利低下に反映しているのだそうです。

経済へ参入した新たな安価な労働を利用できることで企業部門は超過利潤を得られる。つまり、マクロ的にみて給料(労働の価値)は上がりにくいので企業を所有する(株式を持つ)ほうが有利と言えましょう。


もっとも、ミクロ的にはさまざまなので、私もアービトラージされぬよう知恵をしぼらなくては。


いろいろ書きましたが、この週刊エコノミストの記事で一番おもしろかったのは、塩野七生さんのインタビュー記事「ローマとヴェネツィアに学ぶ経済発展の条件」でした。

ローマでもヴェネツィアでも「格差」というものはありました。しかし、それが固定化するということはありえませんでした。
(中略)
ただ、そこで必要なのは「敗者復活戦」です。ローマとヴェネツィアは,そこがうまくできていました。(中略)階級が固定化することはなかったのです。流動性がないと、持てる者はますます富み,持たない者は嫌気がさしてしまう。(中略)
人間というものの現実をみれば,格差は常にあります。しかし、固定化されない限り、人間は常に夢を持てるわけですから、そこを見極めたシステムが必要なのです。

塩野さん、人間の本質と経済成長の原動力をズバリ指摘していると私は思います。