外資の常識 by 藤巻健史
通勤電車の中でストレス解消のための読書にもってこいの「外資の常識」。 あまりのユーモアで笑いをこらえきれない点に要注意という「外資の常識」ですが、「第三部 フジマキ流マーケットの見方」は真剣に読み返しました。 なぜ藤巻さんはそう考えたのか?
外資の常識―伝説のディーラー奮戦記 (日経ビジネス人文庫 ブルー ふ 4-2)
- 作者: 藤巻健史
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 文庫
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「その国の通貨の強弱は、その国の国力を反映する」 −−− 大英帝国のポンド、80年代の日本(円)と米国(ドル)、90年代の米国(ドル) 通貨はポンドの例(対円で1/7まで減価した)のように大きく変化するものである。 通貨を円高で固定させると景気が低迷状態で安定してしまう。
私なりに考えると
- 国力が強いと ― 経常黒字で通貨が強くなる
- 国力が強いと ― 経済が成長しており投資機会(資金需要)が多く国外からおカネが集まり通貨が強くなる
- 国力が強いと ― その国の通貨が貿易決済に使われ国外の通貨需要で通貨が強くなる
- 国力が弱いと ― 上記の逆
- 国力が弱いと ― 景気刺激のためにインフレ的政策を使いがちで通貨が弱くなる
- 国力が弱いと ― 財政赤字を通貨発行でまかないがちで通貨が弱くなる
資産バブル崩壊後の不況の長期化 −−− 藤巻さんは個人的体験から経済を洞察する
ドイツ株 ソ連崩壊のあおりで株価と為替でやられたが配当利回りが大きい → 日本株の配当利回りは金利と比較すると小さすぎ → 日本株は割高 → 株価下落は長期的に続くのではないか → 資産デフレで日本の景気は低迷する。
資産インフレで、インフレを同一収入に対する生活水準の劣化とみなす、という発想。 資産インフレ but 日銀等の反応の遅さ → 資産バブルの行き過ぎ → 長期にわたるバブル崩壊を予想。
構造不況を予見した理由 −−− 個人的体験から経済を洞察
モルガン転職後2年間、クビになる恐怖でひたすら貯金した → バブル崩壊後の雇用不安 → 労働市場の無い日本では失職は収入の著しい低下を意味する → 日本中でクビの恐怖 → デフレで会社の業績が低迷しているときGDPの60%を占める個人消費が回復することはありえない。
ハワイの賃貸用マンションを借金して買った → キャピタルゲインと為替でバランスシートがやられた(借金過多) → 他のものに投資するガッツは出ない → バランスシートが痛んでいる間投資が回復することはありえない*1 → 資産価格は下落しても上昇はありえない。
日本にとっての地価の重要性 −−− 個人的体験より日本での信用創造の根っこを洞察
ハワイのマンションの借金の担保は国内の土地 → 地価下落したら返済を迫られた → 邦銀の融資は担保の価値まで貸せない(キャッシュフローで判断しているわけではない) → 日本では地価下落が続けば信用供給はどんどん縮小している → ベースマネーを供給してもマネーサプライは減る・増えない
インフレが必要な理由
(イ) 企業は資金を借りて事業を行っている → 借金している人はインフレで得 → 企業収益が向上
(ロ) 企業収益向上で失業のリスクが減る → 人々は消費を開始する
(ハ) インフレが資産価格に及べば銀行の不良債権問題も解消し、信用供与もしぜんに伸びる
円/ドルで見るとピンときませんが円安のおかげで現在は(ハ)まで来ているのではないでしょうか。
また、円が安くなれば世界の投資家は割安になった資産(不動産、株)に買いを入れるので、これが資産価格上昇のきっかけとなり国内の企業経営者や投資家のマインドの改善と信用供給増加(マネーサプライ増)を藤巻さんは期待していた、だから円安の信念は揺るがないのでしょう。
新聞報道によれば次の春闘では経営サイドが賃上げに前向きとの説もあり、給料が増えれば消費も増え景気は良い方向に進むのでしょう。 リスク要因は政治かな...。