「円安・インフレ・高金利」が日本を襲う理由 by 櫨浩一 from フナンシャル・ジャパン 12月号 (1/2)

私のメモ、青文字は私のコメント(たわごと)です。

人口減少時代では、需要減少を招くからモノが余ってデフレになり、日本の経済成長率は長期的に低下し、低成長による物価安定・低金利というイメージが世間では一般的かもしれない。 しかし、高齢化により家計部門の貯蓄率が低下する(現役世代の貯蓄 vs. リタイア世代の貯蓄の取り崩し)と、円安・インフレ・高金利となる。

国内の3部門の貯蓄と経常収支の関係式
経常収支 = 家計貯蓄 + 企業貯蓄 + 政府貯蓄(財政収支)

人々は現役時代に貯蓄しリタイア後に貯蓄を取り崩す。 人口の高齢化は貯蓄世代の減少と取り崩し世代の増加を意味しする。 家計貯蓄は、70年代半ばから減少に向かい、今ではGDPの5%以下。 中長期的には団塊世代の引退が貯蓄率低下に拍車をかけ、2020年には家計貯蓄率がほぼゼロになる。
企業貯蓄、バブル崩壊後、企業は借金を返してきた(つまり貯蓄してきた)が、いずれ返済は終わり資金を需要する側に回るはず*1。つまり、企業貯蓄はプラスからゼロになりマイナスに転ずるハズ。 政府貯蓄、今は財政赤字で貯蓄はマイナス。財政黒字になるメドは見えず。 家計部門の貯蓄減少と、企業部門の資金需要サイドへの転換により、2010年代の後半には経常収支は赤字になる。

生産から消費した残り = 貯蓄 = 国内の設備やインフラの投資 + 経常収支(=海外資産の獲得)
05年の日本の国内での投資は、生産を増加させるため投資が約10兆円、既存の設備・インフラの維持のための投資が約60兆円強。
貯蓄が減少すると、生産を増加し豊かになるための投資が出来なくなる。 更に減少すると、既存の設備・インフラの維持が出来なくなる。
これが意味することは、

  • 更新投資を減らす、つまり、優先度の低い既存設備・インフラの維持をあきらめ、放棄する
  • 経常赤字にして(保有する内外の資産を売却し)、海外から資金を得て、設備・インフラの新規・更新投資をする

ということでしょう。
前者から言えることは、政府の政策は生産性が低い地域から人々を撤退させ、インフラ維持の投資を省き、行政サービス(政府消費)を減らす方向に向かわざるを得ない、今の(弱者に優しいという)政治トレンドとは逆にならざるを得ない。
だから、藤巻さんは地方の不動産ならば地方中核都市
後者から言えることは、海外の資金を企業に導入せざるを得ないならば、ROEをグローバル水準に引き上げざるを得ないから、生産性を引き上げるか、労働コストを含む諸コストが減少することが起きなきゃいけない。
だから、藤巻さんは構造改革と円安政策(グローバルに見ればコストが下がる)の両方を提案。

*1:設備の生産能力を維持するためにも投資が必要(更新投資)、したがって企業貯蓄はマイナスになるのが普通。