成果主義

私が勤務する会社では「成果で評価する」というのをやっていますが、そもそもその目的が人件費抑のための給料を値切るための理由づけなので、変なことがいっぱい起きる。 こんなマヌケな会社はそう多くはないだろうと思っていたら、日経ビジネスのアンケートを見ると日本中に蔓延しているみたい....。

このままでは成果主義で会社がつぶれる 読者アンケートに悲痛な声が続々


巨額の財政赤字労働人口の減少を目前にして国内の生産性を上げねばならない時期に、制度の仕組みというかミスマッチが生産性向上の足を思い切り引っ張っているのではないか?


なぜこんなことが起きるのだろうか。 ちょっと自分なりに考えてみる。

(1) ミクロとマクロのミスマッチ
そもそも人件費を抑制しなくちゃいけない理由はデフレでありグローバルに見た高コスト(人件費を含む)思うが、その原因は国内の貯蓄過剰(消費不足)とそれに伴う円高で、その背景には日本の人口分布があった。 企業はミクロにみて競争力回復の為に人件費を減らそうと努力したがそれは消費減少としてデフレ圧力を強めた。 デフレ時の構造改革は痛みが大きくデフレを悪化させる。 今となってはせんなきことだが、過剰貯蓄を海外投資に振り向けるような政策がとられていたら、円安となり、グローバルにみて日本人の人件費が下がり、名目の人件費を下げなくてもよかったのでは。 外貨資産のキャピタルゲインや配当は非課税にするような政策は結構利いたかも。*1
企業は為替変動を嫌うが、為替がファンダメンタルズに沿って動かないから、日本企業の内側が弱くなってしまったのは皮肉...。 マクロで考えた発想がなかったのは残念。

(2) 上から下へのブレイクダウン
社長が株主にコミットした成果を出す為の戦略を事業部長にブレイクダウンし,それを部長にブレイクダウンし,それを課長にブレイクダウンし,それをヒラにブレイクダウンするので担当者の成果は財務諸表につながっている、とインテルアンディ・グローブが本に書いていたような記憶がある。 これをやるためにはファイナンスなセンスで社長の目標と末端の目標をつなげなきゃいけない。 でも、日本の会社でこれをできるところは少ないのではないだろうか。 このリンクが欠けると末端が目標目指して一生懸命やっても業績につながらず、疲労と虚しさだけが残る。 イノベーションも生じにくい。 
ブレイクダウンがなく、コストとしての人件費を削減すれば利益が増え社長の報酬が増えるという構造があると、モチベーションが下がるよなあ。 権限と責任があいまいな職場では成果を出すためのKEYが自分の手元になかったりするから。 
人件費を引き下げて利益を出すのも一手法だが、販売数量を増やしたり付加価値を増して利益を出す努力のほうが明るい、元気も出る。

(3) 労働市場
労働市場があれば、会社の評価が気に食わねば市場に聞いてみることもできる。 市場がないと、移動がハイリスクなるので不満に思いながらも我慢せざるをえない、フラストレーションは溜まる。 こういう環境でクリエイティブな成果は出づらいよなあ。 市場があると評価してくれるところに人がドンドンうつるので、会社のほうは大変かも。 でも適材適所が自然に実現されるので、経済の生産性は最大化されるのでは。 生産性は豊かさの原動力なのになぜ労働市場流動性の効果が注目されないのだろうか?


痛みを伴う構造改革は景気が良い時・ちょっとインフレ気味のときがチャンスではないか。 チャンスが訪れるかもしれないが、準備しておかないとチャンスをつかみ損ねる。 ミクロだけで考えると合成の誤謬にはまるからマクロ的な見方は役に立つと思うのだが。 

*1:こういう意味で、藤巻さんは97年か98年かの日米協調の円売りドル買い介入を残念がるのでしょう。