FRBの金融政策とグローバル経済

日経ビジネスオンライン「高成長に戻る世界経済と取り残される日本」それに対する読者のコメント は興味深かった。


アメリカ経済が低金利でついつい過剰なリスクテイクをしてFRBの利上げでサブプライム問題が発覚しちゃったわけだが、
(1) 「カネを約束どうり支払ってくれるだろうか?、資金繰り大丈夫?」という信用不安はシティ・グループ等が資金調達してEquityを厚くしてしのぐメドがたったが、
(2) 資産価格下落がスパイラルで進むと逆資産効果でヤバくなるのでFRB金利を下げて資産価格を安定させる必要がある
という話。

 そもそも、2006年6月まで、FRBが17回も連続して利上げをし、米国での信用収縮を目指してきました。引き締め政策の効果は、特に過熱した不動産などの資産市場がそのターゲットだったはずです。金利政策の効果は18カ月後に現れるといわれるわけですから、去年のサブプライム問題に端を発した米国の不動産の下落はセオリーどおりといえるでしょう。

 金融引き締めによる信用収縮は、資産市場のうちもっとも過剰なレバレッジと価格の上方乖離をしてきたところに現れるのが普通です。1990年代の前半は世界の不動産、後半はヘッジファンドやアジアの通貨や株式であり、2000年代前半はITバブル、後半は米国のサブプライム市場がそれに該当したわけです。

 しかし、いったん政策効果が出て資産市場が低下を始めれば、今度は過大な信用収縮を防がなければ、金融機関の損失の拡大から連鎖的な金融収縮が起きます。そのために速やかで思い切った金利低下と資金供給が必要になるのです。

ここでしくじると、資産価格がドンドン下落すると担保を処分しても金が戻ってこなくなる → 資金繰りうんぬんじゃなくて支払い能力の問題になってしまう → 信用恐慌、そこまでいかなくても日本みたいになってしまう。

 FRBは米国の金融当局であると同時に、ドルという世界通貨の供給元である以上、自国と世界の資産市場をコントロールする宿命にあるわけです。 ECB(欧州中央銀行)もそうした性格を持ちます。同様に、日本の日銀も、キャリートレードなどを通じて行われる円を通じた信用創造をコントロールする使命を持っているはずなのですが…。

 つまり、中央銀行にとっては、銀行貸し付けという狭い定義の信用創造よりもはるかに規模が大きく変動性が高い、不動産、株式、商品、債券などの資産市場の安定が重要になります。グローバリゼーション金融の時代の中央銀行の宿命です。

中央銀行の公式の使命は物価の安定であり資産価格の安定ではないが、雇用や経済の成長をも使命とすれば、資産価格の安定も中央銀行の視野にあり、FRBやECBはそう振舞うハズ。 となる。 日銀もバブルで懲りたはずだから、次はうまくやってほしい。

 なぜなら、そうして資産市場を支えているのは、短期金利によって借り入れを行う、ファンド、証券会社、銀行の自己部門、保険会社、などの機関投資家です。金利の上昇は、そうしたトレーダーの損益分岐点を、レバレッジを通じて何倍にも悪化させるからです。

 今回のように、いったん資産市場の低下が始まれば、直ちに金利を大幅低下させなければ、金融機関の連鎖的な信用収縮が始まるのです。21世紀のいま、トレーダーの活動は世界に広がり、かつ世界からの資金提供がありますから、損失もまた世界に広がります。日本のようにこの流れを止めようとすれば、その国の金融市場はたちまちローカル市場に転落してしまいます。

資産市場は実体経済に比べ動きが早いので、金利もクイックに動かさなきゃいけない時代。
山崎さんはバーナンキ議長は学者出身で市場出身のグリーンスパン前議長にくらべこのへんの理解が浅いと批判しつつ、米国は人材が厚いから大丈夫だろうと楽観的な様子。

グローバル経済は成長中 → 需要が強い → 原油価格等の上昇!。 しかし、Emerging経済諸国の過剰かつ安価な労働がグローバル市場に供給されることで、安い労働を利用できる・労働が安くなった。 したがって、モノのコストのうち原材料は上昇しても労働コストはEmerging諸国を利用することで低下でき、モノの価格は上がらないかデフレ気味。 

したがって、グローバルな労働コスト裁定を利用できる立場の企業は人はウハウハで、裁定される立場の企業や人は踏んだり蹴ったりになってしまう。 こういう点で単純に「ものづくり」に精進しても(思い切り円安=貧乏な日本にならない限り)ダメだし、多くの製造業ではあまり多くの雇用を望めない(大量の雇用を生み出すのは人海戦術型の製造現場、自動化した工場は雇用は少ない)。 

だから、日本経済の体質を変えなきゃいけない。

 ところが、日本は大きな変革をほとんど行っていません。小泉改革の最大の功績は、欧米では93年に終わった、財政資金を入れた銀行と大企業の救済と整理でした。新しい経済ができたわけではなかったのです。

 それなのに、痛みが大きかった分、日本が大改革を成し遂げたような錯覚に陥っていました。だから、80年代で有効性が終わった東京一極集中の製造業中心、輸出中心の国家モデルから脱却していません。ところが先進企業は海外に出ていきますから、国内経済の空洞化は着実に進んでいるのです。

 それでいて、高速道路に代表されるように、国内のコスト構造は高いままで、文化やサービス産業や観光、農業など欧州型の産業は育っていません。

藤巻さんは「円安にすればグローバルにみれば低コスト」。 他に生産性も重要。 失業者を出さないよう無理やり雇用を抱えているから低生産性&高コストなのか、低生産性のままでよしとするから新しいビジネスが生まれないのか、よく分からないが...。 

 根本的問題は、新しい世界企業が日本からは生まれないことです。時価総額上位50社のうち過去30年以内に一から生まれた企業はソフトバンク1社のみ、これでは、経済成長しないはずです。かといって、アジアなどの成長を取り込むはずの金融業は、一層内向きの対応に追われ、日本市場の地盤沈下は目を覆うばかりです。

新しい世界が相手のビジネス・企業が生まれていないことが一番の問題、と私も思う。
そして最後に

 問題は、今の日本人が世界の経済の変化を理解していないことです。それでいて、20世紀の記憶にとらわれています。新しい世界経済のゲームのルールが見えてくれば、日本人は最高の適応能力を発揮するはずなのです。頑なにならずに、柔軟で広い視野で世界を見ることが日本再生への道につながるでしょう。

というわけで、今年もグローバリゼーション時代の生き方を考え続けていこうと思います。