6/17日経朝刊 経済教室 by 浜田宏一 エール大教授

今の状況と、過去の日本の金融政策を簡潔にまとめてある。


低所得者向けの住宅ローンは危険が伴うが、あたかも安全であるかのように見せかけて貸し手に提供してきた。 その「虚構」が暴露され、投資した貸し手や支払いを担保した金融機関が資金繰りに窮し、ついに倒産の危機に直面している。 これがサブプライム問題である。

これに対し、FRBは、金融機関の連鎖倒産を招き、国民経済全体が混乱しないように、金利引下げなどの金融緩和を続けてきた。対象療法も、金融システム危機の防止には不可欠である。

米国の金融緩和の結果、変動相場制ではドル安・円高圧力を生む。 外国の株式相場にとっては下げ圧力となることが多い。

これに対抗して各国通過当局が金融緩和で追随することが、国際商品市況の上昇を招く。*1


今の米国の金融政策と、かつての日本の金融政策を比較すると対象的。

株価急落後、地価も下降に転じようとしていた92−93年、日銀は極端な引き締めを続けていた。 その結果、資産価格の暴落が続き、日本の金融仲介は破綻する。 急激な資産価値の低下、デフレの進行、流動性の罠が出現し、ついに金融政策を無効にする事態を導いた。 これがその後の日本経済の長期停滞を招いたといっても過言ではない。

プラザ合意時に比べ、1ドル80円突破時には、円の実質対ドルレートは78%増加していた。 政府の政策と日銀の円高歓迎の金融政策が、産業に長期にわたり、高いハードルを押し付け、日本は生産性向上と、製品価格の低下で乗り越えてきた。 最近、実質為替レートがプラザ合意当時に戻ってきたことは、日本の産業に対するハードルが下がってきたことを示す。

流動性の罠」そのものであるゼロ金利の状態では、貨幣と円建ての短期証券とがほぼ完全な代替資産となり、買いオペで両者を交換しても政策効果は生まれない。 そのため、買いオペ対象をドル建て証券のような貨幣と代替性の低い資産にすることが必要になる。

03年から04年春にかけての巨額の円売りドル買い介入は、日本の実質為替レートの緩やかな下落を担保し、日本経済の回復を後押しした。 大規模介入の効果を妨げるような発言や金融政策を差し控えた福井日銀総裁の功績も大きい。


そして、「民主党の経済の不理解」*2と、為替の経路(国際経済の中の日本という視点)の重要性を指摘し、日銀に批判的な学説にも耳を傾けることの重要性を説いた上で、

知的レベル抜群の新総裁を得たことは、大変喜ばしい。 過去の政策の正当化などにこだわらず、景気、インフレの上ブレ、下ブレに同様の配慮を持ち、国民経済全体、国際経済への波及を視野に入れた柔軟な政策を実行すれば、白川氏の名は、日本ばかりでなく世界でも名総裁として歴史にのこるだろう。

と結ぶ。
へそ曲がりな私は、「過去には、これと反対のことがしばしばあったのかしら...」と思ってしまった。

*1:実体経済が刺激されて需要が強くなる思惑と、低金利のおかげで先物の勝負をやりやすくなること、マネーサプライ増加が価格が動きやすい部分から投機を招きつつ価格に反映するのでしょう。

*2:経済を勉強していない政党には投票しないぞ!、国民を不幸にするから。