経済再生の条件

6章、7章、8章が興味深かったのでメモ。


40年不況対策の後遺症
日本共同証券と日本証券保有組合の保有株券の放出にあたり、資本市場の国際開放に備え外国企業に買収されることを嫌い、関係各社が引き取る。 → 株主の力が弱まり、従業員主権型企業となった。

60年代は円が安く、石油・資源も安かったが、この条件が崩れた1970年ごろに高度成長も終わった。
高度成長は、先進国へのキャッチアップの過程での一連のinovation。 日本の20世紀末経済システムや制度・慣行が確立する過程でもあった。

  • シェア重視
  • 政府の規制
  • 年功賃金・終身雇用
  • メインバンクや系列重視取引

1971年のニクソンショック後のドル買い支え → 過剰流動性 → 1972年のインフレ・地価のバブル

70年代のバブル対策で統制的行政手法の導入 → 80年代後半の政官財の癒着構造を強固なものに

1979年 第2次石油ショック → 米国のスタグフレーション → 金融引き締め → 高金利 → ドル高・円安 → 国際収支の黒字(輸出)

20世紀末日本型経済体制
石油ショック対策として、政官財一体で乗り切った → 人々の意識と価値観を変化させ、閉鎖的で内向きな性格に (1970年ごろより)

  • 資本自由化への対応 ... 外資による乗っ取りを警戒 → 産業再編成・安定株主対策
  • 所管官庁と業界の結びつきが強固になる
  • 経済ナショナリズム
  • 円切り上げ回避策(黒字減らし)としての輸入促進 → ダメージを受けるセクタを守るための保護政策
  • 石油ショック対策 ... 三方一両損敵解決(労・企・政)
    • 賃上げ抑制
    • 雇用確保と最終価格の引き上げ抑制
      • 判例の積み重ねによる解雇権濫用法理 --- 不況や経営悪化を理由に解雇することが事実上不可能
  • その結果、政府による企業保護

統制的な行政手法の多用 → 関係者間の緊張関係は緩み、癒着と甘えの構造ができたのではないか。

  • 従業員の会社への忠誠心に全面的に依存した体制
    • 終身雇用、年功賃金、企業別組合
    • 大企業の正規従業員に多く当てはまる制度
    • 会社に忠誠を尽くせば定年までの職場が確保されるという意識・価値観
  • 政治的に既得権益を保護する体制
  • 既得権益によって得た一種の超過利潤を仲間内で配分する体制
    • 政・官・労がそれぞれの各省庁の所管業界ごとに結集し、業界ごとに新規参入お排除して超過利潤を分け合う仕組み
    • 高度成長が終わって増分の小さくなったパイの分け前を守る。特に非製造業でより内向き・閉鎖的になり

人々の意識・価値観
製造業 : 賃金コストの重圧に耐え切れず、製造業の空洞化 → 設備投資機会の喪失、過剰資金を土地・株へ、金余りで本業の設備投資機会が少ない → バブル → あつものにこりてなますをふいたのが90年代
非製造業 : 甘えの構造、戦略に欠けたなし崩し的な金融の自由化 → 大企業の銀行離れ → 不動産関連融資へ ... いざというときに助けてもらえるという甘えの構造
「横並びが最も安全」という風潮

80年代〜90年代の経済的失敗 ... 戦略性の欠如
組織の行動に戦略性が欠けると致命的失敗をもたらす場合が多い。

  • 80年代後半 : 部分最適化政策と中途半端な制度へんこう → 資産価格の暴騰
  • 90年代 : 状況判断の誤りと問題解決の先延ばし → 経済大停滞

何のために政策を実施するのか国家・国民的目標があいまい。 先進国へのキャッチアップ後の目標・国民的コンセンサスが無い → 個別の経済政策の目標の位置関係と順位も明確にならない → 80年代後半の部分最適化政策と中途半端な制度変更
80年代後半の政策目標 国際政策協調、円高対策、内需拡大財政再建 → 金融政策に対する過大な圧力となった
90年代 バブルつぶしの掛け声にのった急激な金融引き締め →資産価格の急落 → 信用システムの崩壊 ... 政策優先度の選択の失敗、部分処理先行、戦略的構造改革が必要でも現実の選択は短期的によりコストのかからない既存権益を優先する選択しが選ばれる
90年代 デフレ進行下で企業者がイノベーションを行おうとするインセンティブを失ってしまったことが経済大停滞の大きな要因、企業者がいないのに財政出動しても経済は活性化しない


経済再生の条件―失敗から何を学ぶか

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